昔から読書家で学ぶことに貪欲だった宇垣さん。フリーになってからは執筆活動にもより一層力を入れています。アナウンサーとして、コラムニストとして、それぞれの言葉を扱う宇垣さんに、学ぶことの大切さや書くことへの原動力をお聞きしました。
私は、「将来のため」にする勉強は嫌いですが、学ぶことは楽しいし、好きです。小学生の時は勉強をした覚えがなく、本を読んで、本からいろいろなことを学びました。中学生・高校生になっても国語(現代文)の勉強はしたことがありません。さすがに大学受験の時は一生懸命勉強しましたが、特別なことをしたわけではなく、教科書をよく読んでいましたね。
小学生の時に塾で速読を習ったので、読むのは早いんです。小学校では『ハリー・ポッター』や『ダレン・シャン』シリーズといったファンタジー小説をよく読んでいましたが、中学生になると三島由紀夫やドストエフスキーなど、日本文学・世界文学も読むようになりました。宗教に恋愛、犯罪、思想、父子関係などあらゆるテーマを含んだ『カラマーゾフの兄弟』が中学生に理解できるのかというと「?」でしたが、最後まで読み終えましたよ。
私はとにかく「読む」ことが好きだったおかげで、特別な勉強をしなくても漢字を読むことができましたし、語彙が増えると、表現の幅も広がりました。そのため、子どもの頃から「書く」ことも好きで、苦手だと感じたことはありません。読書感想文ではよく賞をもらっていました。
2019年にはフォトエッセイを出版しましたし、コラムを書く仕事も積極的にさせてもらっています。もともと、自分が感じたことや見つけたもの、思いを言語化することがすごく好きなんです。「きれいだな」と思ったものを、どんな風にきれいだったか言葉にすることが楽しい。「こんな感じだよね」と色に名前をつけていくイメージです。パズルのピースがカチッとはまっていくようで、見えている世界の解像度が上がる気がします。
私はアナウンサーとして話す仕事もしていますが、話す言葉は速度が速いし、声色や顔の表情で言葉に厚みも出ます。だからこそ強く伝わることがある反面、つい口にした言葉に「間違えた!」と焦ることもあります。一方、書く言葉は速度が遅いからこその正確性があります。吟味して、推敲して、何度も見返すので、嘘のない、自分の本音に一番近い思いを表現できるのが、書く言葉だと思います。
日本語の魅力は、漢字、ひらがな、カタカナがあって表現の幅が広いところ。それを楽しみながら、「これは漢字にしよう」「こっちはカタカナの方がいいかな」と使い分けています。また日本語には、オノマトペ(擬音語・擬態語)がどんどん生まれていたり、「そんな表現あるの?」と思うような言葉を女子高生が話していたり、面白いですよね。若者の活字離れや日本語の乱れが指摘されていますが、格式ばって考えなくてもいいと思うんです。言葉は生き物ですから、文法にこだわらず、楽しんで使ったり学んだりしてほしいですね。そして、漫画でも何でもいいので物語を読むことも人生の役に立つはず。どこかできっとあなたの助けになるんじゃないかなと思います。
文章を書く時に、よく読んでいる作家の文体がにじみ出るなと感じることはよくあります。三島由紀夫や坂口安吾の文体も好きですし、現代では山田詠美さん、桜庭一樹さん、辻村深月さんが高校生の時から好きで、新刊が出ると必ず読んでいました。
vol.16 フリーアナウンサー 宇垣美里さん
- (前編)正解は探さなくていい自分の思うことが正解だから
- (後編)書く言葉が本音を一番伝えられる
バックナンバー
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vol.15 お笑いコンビ 和牛さん
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vol.14 鈴木愛理さん
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vol.13 笑い飯 哲夫さん
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vol.12 光浦靖子さん
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vol.11 高橋英樹さん
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vol.10 メンタリストDaiGoさん
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vol.9 菊川怜さん
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vol.8 伊藤美誠さん
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vol.7 松尾依里佳さん
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vol.6 池谷裕二さん
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vol.5 金田一秀穂さん
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vol.4 向井千秋さん
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スペシャル対談 グローバル時代の日本語を考える
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vol.3 大宮エリーさん
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vol.2 厚切りジェイソンさん
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vol.1 つるの剛士さん