いつも自分に正直に、自分らしさを貫いているフリーアナウンサーの宇垣美里さん。子どもの頃から読書家で、価値観や生き方も本の影響を受けたそう。そんな宇垣さんに、読書から得たことや自分との向き合い方を教えていただきました。
子どもの頃から頑固と言われ、自分のやりたいことを貫くタイプでしたが、家族はそんな私を尊重してくれていました。例えば、体育の授業を休んだ時、「どうして休んだの?」と家族に問われ、「休んだらどうなるかを知りたかった」と私が答えると、「そう。でも次からはちゃんと行ってね」と、私の行動を否定されることはありませんでした。もちろん、正しくないことをした時は怒られましたよ。
人と考え方が違うな、価値観が合わないなと感じたのは中学時代。公立の中学校だから同じ地区に住んでいるというだけで集まっていて、あらゆる考え方の“るつぼ”でした。その中で、大勢がカッコいいと思うことやダサいと揶揄(やゆ)することに、私は共感できなかった。女子にありがちな、みんなで一緒にトイレに行くことも苦手でした。本を読んだり、勉強をしていたりするとからかわれることもありました。でも私は、たくさん本を読んでいた分、人より語彙力があったので、からかわれても相手を言い負かしていましたね。
高校では個性的な子が多くて、価値観が違うのが当たり前でした。勉強していても「ガリ勉」なんてからかわれることもない、本を読んでいて「暗そう」と言われることもない。とてものびのび過ごせて、より自分らしくいられるようになりました。
両親が読書家で、本がたくさんある家で育ったので、子どもの頃から本を読むことは好きでした。自分とは違う世界に行くことができるのがすごく面白かった。私は私でしかないけれど、本の中ではお姫様にもなれるし、勇者にも研究者にも妖怪にだってなれる。その中で自分と同じ考えや価値観を見つけることも楽しかったですね。私は本からたくさんのことを学びました。価値観を固めてくれたのも、言葉を与えてくれたのも本だったと思っています。
私はよく「自分を貫いている」と言われますが、決してそれが正しいとは思っていません。人に合わせたり、何かを言われても受け流したりしてうまくいくのであれば、それでもいいと思います。私はそうすると自分がしんどくなってしまうタイプだというだけのこと。
こんな私ですが、アナウンサーになりたての頃はいつも正解を探していました。「どう言えばいいんだろう」「どんなリアクションをとるのが正解だったんだろう」と考えてばかり。そんな時「正解は何だったんですか?」と聞いた私に、ある番組MCの方が「正解を探すのはやめて、あなたがやりたいことをやりなさい。あなたが思ったことが正解だから」とおっしゃったんです。目からウロコが落ちましたね。もちろん、求められることを察知する能力も大事ですが、それがすべてではない。自分がやりたいことをやる、言いたいことを言ってもいいと分かって、すごく救われました。
それでも人生には、何をやってもうまくいかない時もあります。そんな時、支えになるのは「カッコ悪いことはしていない」という自信。だから、人の悪口を言うとか、後から振り返って「そんな私は好きじゃない」と思うようなことはしたくない。好きじゃないことをしている時間はムダだと思うくらいです。どんな時も、自分を好きでいられる自分でいたいですから。
自分のことが好き、自分を大事にしよう。そう思うようになったのは、家族の存在が大きいですね。特に妹はいつも「お姉ちゃん、カワイイ!」と言って、私の存在を全肯定してくれます。大切な家族や友達が私のことを好きと思ってくれている。私は、自分の大切な人の“大切なもの”。だから自分を大事にしなきゃいけないなと思うのです。
アナウンサーになるためには、漢字を読めた方がいいことから漢字検定2級を取得しました。漢字の成り立ちや書き順を知ることは楽しいですよね。好きな漢字は「凛」です。常々、自分がそうありたいと思っています。どんな時でも自分の軸や品位を失うことのない人になりたいです。
vol.16 フリーアナウンサー 宇垣美里さん
- (前編)正解は探さなくていい自分の思うことが正解だから
- (後編)書く言葉が本音を一番伝えられる
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