お笑いコンビ「オアシズ」としてデビューして以来、コンビでも単独でも多方面で活躍する光浦靖子さん。バラエティ番組はもちろん、お笑い界きっての才女としてクイズ番組にも出演するほか、趣味の手芸を活かした活動や雑誌などでの執筆活動もしています。そんな光浦さんに、学生時代からお笑いタレントになるまでを振り返っていただき、皆さんへのメッセージもいただきました。
私は幼い頃から、おとなしくてマイペースなタイプでした。小学校高学年のときに学級代表になったものの、クラスの問題に対して一つひとつ思いつめて悩んでしまうのが辛く、その反動で中学からは楽天的なふりをするように。高校からは、賑やかな子たちとよく一緒に遊ぶようになりました。当時は、遊ぶところもないような田舎に住んでいて、放課後に喫茶店にでも寄ろうものなら、学校と自宅にすぐ連絡がいくような厳しい環境でした。特にやることもないので、勉強していましたね。今思えば、親に一度も勉強しろと言われたことがなかったから自分の意志でできたのかもしれません。
大学進学は、高校の先生が勧めるままに東京外国語大学を受験。塾にも通わず、独学で受験勉強をしていたので、受験科目もよくわかっておらず、なんと試験にない理系科目まで勉強していました。夜遅くまで机に向かっていると、親に「電気代がもったいない」なんて言われるような家庭だったので、「大学に受かって、こんな家出て行ってやる!」と一層勉強に身が入りましたね(笑)。
大学はインドネシア語専攻で合格したのですが、授業についてゆけず、2年生ぐらいから行かなくなりました。20種類ぐらいアルバイトもしたのですが、どれもすぐにクビに。「このままでは社会に出られない」と、いっそ自分が一番苦手なことをやってみようと思い立ち、幼なじみの大久保佳代子さんとお笑いのオーディションに挑戦しました。すると、意外にも合格したのです。
現在は、お笑いタレント業のほかに、手芸キットの商品を手がけたり、イベントを開催したり、手芸本も出しています。好きでやっていただけの趣味が、まさか仕事につながるとは思っていませんでした。こういうことをしていると、好きなこと(趣味)を見つける方法をよく聞かれますが、そもそも「好きなことを見つけなければならない」という社会の風潮がおかしい気がします。「好きなことがあるのは得だ!」という大前提が…。お金も時間も使うし、もしかしたら生活を壊すかもしれないのに。
好きなものを必死で探すというのも変な話で、探すまでもなく、降って湧いたようにいつのまにか夢中になっていることが好きなこと。また、「自分が好きなことはこれだ」と限定してしまうのも世界が狭まる気がします。あまり深く考えず、何でも気軽にやってみるうちに好きなことが見つかることもあるのではないでしょうか。
それでも、何もやりたいことがなく、ただ時間が過ぎるだけの毎日に罪悪感を覚える人は、何かを学ぶことをお勧めします。特に好きなことでなくても、例えば資格取得などの目標に向かって取り組んでいると、「自分は学んでいる」と自己肯定できるので生きやすくなります。現代は豊かであるがゆえに、苦悩の多い時代ですからね。日本社会は、まだまだ資格の有無で能力が判断されるので、学んだ成果として資格を持っているのは有利だと思います。
地元の幼なじみだった相方の大久保佳代子さんは、愛知県から上京して3カ月もしないうちに話し言葉が標準語に変わりました。それを見て私が一言、「すぐ魂売った」と言ってしまった手前、数十年経った今も標準語に変える時期を逸したまま。三河弁には敬語がないので、敬語を使うときにはおのずと標準語になります。「だもんで」という言葉が、特に好きです。
vol.16 フリーアナウンサー 宇垣美里さん
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- (前編)学ぶことは、自己肯定につながる
- (後編)似て非なる、話すリズムと文章のリズム
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