歴史に詳しいことでも有名な、俳優の高橋英樹さん。日本史にまつわる書籍の執筆や、NHK番組「高校講座・日本史」のMCも務め、わからないことは何でも調べるという勉強家。ご自身が日々実感されている学ぶことの面白さ、勉強に意欲を持たせるための工夫や保護者の方へのメッセージもいただきました。
私は時代劇で役を演じる際に、その人物がどんな人なのかを知るために、まず本を読んで勉強します。文献や、さまざまな小説家によって書かれたものを何冊も読んで、その人物にまつわる土地を訪れるんです。そこで郷土史家の方々と話し、人物像を創り上げてから役に臨んでいます。
けれど、実は歴史というのは「勝者の歴史」といって、勝った人がその前の時代の人を評価しながら主観的に記録したもの。だから、今伝えられている情報が正しいとは言い切れないんです。真実をわかっている人は誰もいない…それが歴史の面白さ。当時の世界を自分でひも解いていくのが楽しい。歴史上の人物が過ごした場所や人とのつながり、どんなことをしたのかを知っていくうちに、「こういう人だったんじゃないかな」と自分なりに考え、人となりを構築するのが私は好きです。さらに、別の人物について調べていると、前に演じた役と同時代につながったりすることもあって、そんなときは大興奮しますね。
もともと勉強は嫌いじゃないんですが、学生の頃は親に反発してあまり勉強しませんでした。でも今は、クイズ番組に出演すると決まれば本を何冊も読んで挑むほど、夢中になって勉強します。回答できなかったときは悔しくて、収録後にわからなかった問題を調べているうちに徹夜してしまったことも(笑)。漢字のクイズも大好きで、紙に漢字と読み方を書き、一方を隠してチェックする方法で地道に覚えます。珍しい読み方を知ると興奮するので、勉強すればするほど楽しいですね。
今、日本史講座の番組に出演していますが、歴史が苦手だという生徒さんが多いと感じますね。教科書通りに授業をしてもなかなか興味を示してくれないので、視点を変えて「今の人たちだったらこう考えるだろうけど、昔の人はこう考えたんじゃないかな」という説明をするようにしました。すると、皆さんすごく興味を持たれて、終わる頃には「もっと勉強したい」と言ってくれたんです。
やはり、興味さえ湧けば、おのずと学ぼうという意欲につながるもの。一足飛びに優秀なレベルに到達できなくとも、コツコツ勉強していれば、ふと気づいたときに「あんなに急な階段だったのに、いつの間にか息切れもなく上れている!」というように成長を実感できるものです。
今の若い人は、絶えず多くの情報にふれているせいか、吸収のスピードがとても速い。私たちの時代とは全然違います。だから、取り組み方、進め方さえ教えてあげると、どんどん学力を上げていけるんじゃないかと思います。
親御さんの立場からすると、とにかく子どもに「勉強、勉強」と押しつけてしまいがちですが、優秀な学校に入れることが親の責任ではありません。親としてできるのは、ある程度本人が勉強を好きになるのを待ちながら、子どもがどういう才能を持っていて、それをどういう方向に向ければその才能が活かせるかを見つけてあげることではないでしょうか。
せっかく子どもが素晴らしい才能を持っているのに、それを見逃してまったく違う方向に進んでしまうのは残念なこと。わが子が何に興味を持ち、どんな才能があるのかを早く見つけてあげることが一番だと思いますね。
とにかく何にでも興味を持つということは、気持ちの若さにつながる気がします。私は、日常の中で知らない事柄に出くわすと、必死になって調べるんです。辞書を引くのとは違って、スマートフォンで調べるとすぐに忘れてしまうので、何度も同じことを調べたりしていますが…。気になって、調べて、発見する。それが私にとって楽しく、元気の素になっていますね。
vol.16 フリーアナウンサー 宇垣美里さん
バックナンバー
-
vol.15 お笑いコンビ 和牛さん
-
vol.14 鈴木愛理さん
-
vol.13 笑い飯 哲夫さん
-
vol.12 光浦靖子さん
-
vol.11 高橋英樹さん
- (前編)守り続けたい日本語の美しさ
- (後編)興味を持つことが学びの原動力になる
-
vol.10 メンタリストDaiGoさん
-
vol.9 菊川怜さん
-
vol.8 伊藤美誠さん
-
vol.7 松尾依里佳さん
-
vol.6 池谷裕二さん
-
vol.5 金田一秀穂さん
-
vol.4 向井千秋さん
-
スペシャル対談 グローバル時代の日本語を考える
-
vol.3 大宮エリーさん
-
vol.2 厚切りジェイソンさん
-
vol.1 つるの剛士さん