ベストファーザー賞(2008年)、イクメンオブザイヤー賞(2011年)の受賞などで理想のお父さん・愛妻家としてのイメージも強い、つるのさん。会話の端々に奥様や子どもたちへの気遣いと愛情が垣間見えます。そのベースとなっているのがご両親から伝えられてきた言葉や深い愛情。愛情に満ちた言葉があったからこそ自分らしく成長できたと語るつるのさんの子育てとは?好きなことを尊重する“つるの家”流の成長論を語っていただきました。
幼い頃から何かあるたびに両親は「大丈夫。あなたは私たちの子どもだから大丈夫!」と励ましてくれました。それが子どもへの絶対的な愛情だと気付いたのはずっと後になってからですが、この言葉を思い出すだけでいつも不思議と自信が生まれましたね。「あなたは大切な私たちの子どもです。ずっと見守っているから、自分の思ったようにやりなさい。何があっても応援していますよ。頑張って!」と自分の良さを認められ、背中を押されたような気がしたのです。
ピンチの時も、両親の「大丈夫!」という言葉に支えられました。くじけそうになっても努力して、挑戦し続けることで困難を乗り越えられたのは、両親からの言葉があったから。前へ進む勇気や困難を乗り越える力、挑戦する大切さを知ることができたと思っています。
自分自身の経験から、「大丈夫!」は魔法のような言葉だと僕は思うのですが、すぐに効果を発揮するものでないとも感じています。一人ひとりの子どもの心に根づいて、魔法の言葉になるまでいつまでもどんな時でも深い愛情を注がなくてはいけません。僕も自分の子どもたちに、それぞれの良さを認める言葉と愛情を注いでいきたいと思っています。
我が家には子どもが4人いますが、4人もいれば個性もいろいろ。それぞれに自分らしさを発見して欲しいと思っています。やりたいと思うことが見つかれば、それをバックアップする存在でありたいですね。子ども同士を比べたり、競わせたりせず、子どもの個性を認めて「これを頑張ったらいいよ」と褒めてチャンスを与えることが僕の信条。それこそが父母から教わった愛情だし、子どもたちに伝えていきたいものなのです。
今のつるの家と同じように、僕自身、大家族で育ちました。父と母、妹たちの家族みんなで楽器を演奏し、一緒に合奏することもしばしば。家の中には、両親の好きな音楽と本がいつもありました。手塚治虫の『ブッダ』を好きになったのも母の影響ですね。
僕も、僕の両親が僕や妹と楽しんだように、楽器演奏やアウトドア、スポーツなど僕が好きなものに家族みんなでチャレンジするようにしています。これは、僕自身が楽しんでいる姿を見て、子どもたちも好きなものを自分自身で見つけてくれたらいいなと思うから。「好きこそものの上手なれ」のことわざのように、好きなものは上達が早いはず。興味を持ってもらえたらいいなと思って、将棋関連のものや楽器、読んでもらいたい本などを目につく場所や手に取ることができる場所にさりげなく置いておく、という工夫もしています。その中には『ブッダ』全巻セットも並べてあるんですけど、まだ触れた形跡はありませんね。いつか好きになってくれたらうれしいし、他に好きなものができるかもしれない。好きなものを見つけてくれたら、それでいいです。
僕自身、音楽や将棋、そして子育てなど好きなものに真剣に夢中で取り組んだことで成長してきたと感じているし、これからも成長していきたいと日々思っています。
つるのさんの長男の名前は詠斗(えいと)くん。生まれる一週間前にミュージシャンの大瀧詠一さんの“詠”という字をカッコいいと感じて名付けたのだとか。
「言偏に永久の永を調べてみると、詩歌を詠んだりすることとあり、即座にこの字を使おうと決めました。また斗という字は星という意味もあり、『星の王子さま』が好きなので、歌の星に生まれた男の子という意味も込めました。さらに英語の“eight”と同じ発音で、外国でも呼んでもらいやすいかもしれないと思って…」と話すつるのさん。
残る3人の娘さんの名前も「うた」「おと」「いろ」と、つるのさんの好きなものからさまざまな思いを込めて名付けたそうです。名前のイメージだけでも、賑やかなつるの家の雰囲気が伝わってくるようですね。
高校生の時、母の本棚にあったマンガ本になにげなく手を伸ばしたのが『ブッダ』との出会いでした。読んでみると哲学的で、とても感動したのを覚えています。作者である手塚治虫のすぐれた才能と偉大さにも驚きました。大人になって読み返してみると、また違った感動があり、改めて素晴らしいと感じました。
『ブッダ』全12巻漫画文庫
(潮ビジュアル文庫)
手塚治虫著 潮出版社
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