結成13年目を迎え、「今、最も単独ライブのチケットが取れない芸人」として人気を集める実力派お笑いコンビ・和牛。ボケの水田信二さん、ツッコミの川西賢志郎さんの二人が漫才をつくるうえで実践している言葉選びや、大切にしていることを伺いました。
川西 コンビを組んで間もない頃は、水田くんに「てにをは」まで台本通り正しく言うツッコミを求められていましたが、今は僕自身の言葉で面白くなることを優先しています。ネタの中で、何かをきちんと説明しなければいけないとか、ここはしっかり伝えないといけないという時は、言い回しや文章の組み立て方にとても気を配っていますね。
水田 以前、4分間のネタで「枯山水」という意味を説明することがありましたが、限られた持ち時間の中でみんなに伝わるように「この言い方はどうやろう」、「この単語なくても大丈夫ちゃうか」と、二人で何度もすり合わせをし、お客さんに正しく伝わることに全力を注ぎました。
川西 単語の意味をちゃんと伝えるだけだったら、言葉をいっぱい並べて説明すればいいだけだと思うんです。でも漫才って、単語の意味が伝われば笑いになる、というわけじゃない。しゃべり過ぎていたり、説明が重たくなったりすると、その後ボケにくくなることもあるので。いかにライトに、でもちゃんとイメージしてもらえるように伝えられるかを意識して言葉を選んでいます。また、カッコつけるというニュアンスで「イキる」という言葉を使いますが、これって関西弁ですよね。そういう方言や分かりにくい語句をより万人に理解される言葉に置き換えています。また、芸人の間でよく使う用語は使わないようにしたり、事前に伝わらない言葉を省くように心がけています。
水田 僕らは「どう伝えるか」を意識するタイプなので、より多くの言葉を知っていた方が良いと思います。でも言葉を知り過ぎていると、みんなも知っていると思っていた言葉が実は一般的にはちょっと難しい言葉ということもあるので、どのくらい世間の人が知っているかを理解しないといけないなと感じています。
川西 「へりくつ漫才」と呼ばれる僕らの漫才スタイルですが、実は結果が伸び悩んでいた時期にできた漫才の形なんです。「自分たちの色をつけなあかん。自分たちの面白さは何やろう」と考えていた時、ある仕事で水田くんが同期の芸人をずっと正論でいじるという流れがありました。周りやお客さんにウケたかどうかは置いておいて、僕はそれを面白いと感じたんです。そこから水田くんのそういう性格を漫才に活かせないかと考え始めました。
水田 正論で細かいことばかり言い続けるキャラが出てくる漫才をしてみようと決めてからは、ネタがスラスラと書けたので「あぁ、なるほど。自分に向いてんねんなぁ」と思いましたね。
川西 自分たちらしい会話や漫才のキャラクターを見出すのに、僕たちは苦労した方だと思います。“強み”とは何ができるとか得意ということだけじゃない。少しネガティブに捉えられがちなことも強みになる可能性があるんです。そこに気づけたことで大きく変われたのかもしれないですね。
水田 これからもそんな自分たちの個性を大切にしながら、今までどおり漫才をしっかりやっていきたいです。月1回のライブに向けて新ネタを作り、試して、さらに練っていく。そんな作業の繰り返しが、僕らを漫才師でいさせてくれている大切なルーティーンであり、モチベーションを保つ要因となっています。
川西 実はライブ当日、開演2~3時間前まで新ネタができていないことも……。6割程度の完成度のままで、あとは舞台上でしゃべりながら肉付けしていき1本のネタが完成することもあります。だから、新ネタライブはまぁまぁスベったりします(笑)。
水田 ズボラなんでね。ギリギリまで頑張らないですよ(笑)。
川西 水田くんは「我」ですね。とにかく自分というものが強い。どんな時も自分が優先という意味で。
水田 川西くんは「職」かな。仕事に対する責任感の強さや芯がブレないところが、まさに職人のよう。ただ、お互いに「我」と「職」の部分があって、僕らの漫才ではどちらも大切な要素になっています。
川西 そうやね。漫才をつくるうえで必要な、我々の個性という意味での「我」と、どれだけ笑いを突き詰められるかというところは「職」につながっていると思います。
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