漢検漢字文化研究奨励賞
平成18年度(第1回)受賞者発表・講評・論文
平成18年度 漢検漢字文化研究奨励賞 受賞者
各賞 | 受賞者(敬称略) | 論文タイトル | |
---|---|---|---|
最優秀賞 | 森賀 一惠 (もりが かずえ) |
富山大学 人文学部 教授 |
漢字の本質 論文PDF(20MB) |
優秀賞 | 田村 夏紀 (たむら なつき) |
大阪大谷大学 文学部 聴講生 |
「鳥」の字体の変遷について ―古辞書に書かれた異体字の存在― 論文PDF(16MB) |
佳作 | 岡本 和子 (おかもと かずこ) |
会社員 | 辻という字について 論文PDF(7MB) |
佳作 | 佐々木 絵美 (ささき えみ) |
早稲田大学大学院 文学研究科 日本文学コース 修士課程1年 | 北海道函館市旧椴法華村における 「椴」表記についての考察 論文PDF(12MB) |
講 評
京都大学大学院人間・環境学研究科教授
財団法人 日本漢字能力検定協会 評議員
阿辻哲次
平成18年度漢検研究奨励賞は厳正な審査の結果、受賞者が決定した。受賞された方々に対して心よりお祝いを申しあげたい。
この事業は、(財)日本漢字能力検定協会が主催する諸事業として、わが国の歴史を通じて文化に深くかかわる漢字と日本語(国語)に関するすぐれた研究または評論・調査などを顕彰し、研究者の研鑽をたたえ、成果を世に広めるための制度としてはじまったもので、今回が第1回であった。
当初は情宣活動面における時間的制限もあって、世間への滲透が不十分で、そのために応募締切を延長し、再告知したところ、各地から力作が総計14点投稿された。
投稿に際しては、あらかじめ設定されていた45歳以下という年齢制限が完全に遵守され、投稿論文はいずれもすべて将来の発展が期待できる若い世代による研究であった。このことは、現在の日本において漢字と日本語の研究に研鑽を積んでいる方が各地にたくさんおられることを証明し、さらにこの論文顕彰の事業がこれからの斯界の研究の進展に際しておおいに貢献するであろうことを十分に予見させた。
ただ投稿された論文の中には、十分に深い内容の論文でありながら、募集要項に記載された事項に抵触するものがあったのがまことに残念である。
具体的には「漢字研究または漢字に関わる日本語研究」とある規定をはるかにこえて、広く中国の文化全体、あるいは個別のジャンルの各学問に分類されるべきもので、漢字を主要なテーマとしているとは認定されず、選考の対象から除外されたものがあった。また「既に他に公表した論文は対象外とする」という規定に抵触し、すでに大学の紀要などに発表されたものと実質的に内容がほとんど重なっている論文があって、それも選考の対象とはされなかった。
はじまったばかりのこの事業が、大学などの機関における研究者のみならず、これまで検定試験を通じて漢字を学習してきた方々のあいだに広く認知され、これまでの学習という姿勢から、さらに研究という方向へ、漢字とのつきあいが深まっていくきっかけとなることを、審査にあたったものの一人として切望するしだいである。
最優秀賞 森賀 一惠
『漢字の本質』
音声言語の研究を中心に展開されてきた近代言語学の流れのなかで、言語表記のための文字という観点から漢字をとらえた意欲作。従来のほとんどの漢字研究が中国という枠内からの考察であったのに対して、それとはまったくことなったアプローチからの分析と考察はまことに貴重である。問題設定の面でもオリジナリティーの面でも最優秀賞としての資格を十分に備えたものと評価できる。
優秀賞 田村 夏紀
『「鳥」の字体の変遷について-古辞書に書かれた異体字の存在-』
万人になじみのあるきわめて一般的な漢字をとりあげながら、その字体には歴史的に多様な変遷があったことを、多くの辞書を対象として実証的に明示した力作である。資料の調査と分析も周到で、論文としての完成度も高いと評価できる。
佳 作 岡本 和子
『辻という字について』
漢字や日本語を専門的に研究する立場ではない一般社会人である著者が、日常の生活の中でふと疑問に思った「辻」という字を取りあげ、誠実に調べた努力の跡がはっきり見られる点を評価する。考証に関しては若干あいまいな部分や、調査不足の部分も指摘できるが、専門家以外の漢字学習者への奨励となることも期待して佳作とする。
佳 作 佐々木 絵美
『北海道函館市旧椴法華村における「椴」表記についての考察』
ここ数年のあいだに変化が予想される地名に使われた漢字に着目した実証的な論文。特定の文字だけをとりあげたもので、論文としての粗さもいくぶん目につくが、調査は周到であり、文献だけでなく現地に赴いて実地調査をも行なっている点を評価した。若い研究者の今後の発展に期待して佳作とする。
事業・活動情報
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調査・研究活動
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