今、あなたに贈りたい漢字コンテスト
家族部門 受賞作品
絆大賞
井上 琴子 さん
(北海道・立命館慶祥中学校 2年生)
私は、お父さんの靴をあまり見たことがありません。朝は私が起きるより早く家を出て、帰るのも私が寝てからです。前にお父さんと一緒に靴を見に行きました。小さいころはどうしてこんなに似たような靴が何足もあるのか分かりませんでした。でも、靴を選ぶお父さんは、仕事のパートナーを探しているように見えて、私にとってはそんなお父さんが誇りに思えました。お父さん、いつもありがとう。お父さんは私の目標です。
審査員からのコメント
琴子さん、お父さんがこの作品を読んだら、きっと涙することでしょう。毎日、朝早くから夜遅くまで必死になって働いていて、「ああ、娘がこう思ってくれるなんて、働いてきてよかった」と思うに違いありません。お父さんの存在感を「靴」によって表現するなんて、なんとすごいだろうと思いました。そして靴はお父さんの「仕事のパートナー」だというのも素敵な表現です。お父さんへの感謝の気持ちにあふれていて、私もふたりの娘の父親として、とてもうれしくなりました。(橋本五郎)
日本漢字能力検定協会賞
岡本 亜衣美 さん
(京都府・京都教育大学附属京都中学校 3年生)
私はこの「青」という漢字がお母さんにぴったりだと思います。水をつければ「清」、日をつければ「晴」、米をつければ「精」と色々な漢字になることができるこの字。きれい好きで、曲がったことが嫌いで、いつも明るくて、精神的にも私の支えになってくれるお母さん。そんなあなたにこの漢字をおくります。
審査員からのコメント
古代、中国で生まれた漢字は10,000語程度であったと言われています。時とともに漢字の数が増え、漢字博物館の漢字タワーには50,000字を超える漢字が書かれています。漢字は日々増え続けていくものかも知れません。貴女がお母さんに贈る「青」、それはいくつもの漢字が作れる、広がりのある漢字です。お母さんの幅広い人間性を広がりのある「青」という言葉で表してくれましたね。(髙坂節三)
審査員賞
鈴木 杏奈 さん
(宮城県・事務)
最後までばあちゃんと手を繋いでいたのは私であり、手を離してしまったのも私でした。東日本大震災の津波に襲われ私が手を離してしまったからばあちゃんは命を落としてしまいました。ばあちゃん、本当にごめんなさい。80歳を過ぎてもあの逞しい手は昔懸命に働いた証です。あの手の感覚を私は今でも覚えています。
審査員からのコメント
東日本大震災から六年が経とうとしています。津波の恐怖と、家族を助けることが出来なかったという自責の念は、歳月の長さも決して過去のものにしないことを痛感させられました。でも思うのです。おばあさんは天国にいて、杏奈さんがおばあさんの手を離さざるをえなかったことよりも、手を繋いでくれたことをきっと感謝していると思います。そして、杏奈さんがこれからの人生を一生懸命生きていくことを、手を通じて「命のバトン」をしたことを思いながら祈っているに違いないと思うのです。(橋本五郎)
寺川 亜由美 さん
(北海道・北海学園大学 3年生)
私が成人となるまで元気に育ててくれた母。癌を患い、痩せてしまった母。そんな母と、成人を迎えた今もずっと一緒に居たいと私は願う。まだまだ子供な私は、そんな母に甘えてしまうこともあるけれど。「寄」り添えば、いつか「奇」跡が起こるかもしれない。だから、まだまだそばにいさせて下さい。
審査員からのコメント
私も癌の手術を経験した者として思います。病気は家族を引き離しもすれば、反対に家族の絆をいっそう強固にもします。亜由美さんにとっては、お母さんへの感謝と元気でいてほしいという気持ちがさらに強くなったように思います。「寄り添えばいつか奇跡が起きるかもしれない」という表現には、奇跡を起こしてみせるという強い意志が感じられます。お母さん、あなたのお陰で娘さんはこんなに立派に成長されたのです。辛いでしょうけれど、ぜひ癌を克服していただきたいと思います。(橋本五郎)
末 樹里 さん
(鹿児島県・鹿児島市立鴨池中学校 3年生)
私は、生まれた時から足に大きなあざのようなものがあります。とても目立つので友達にからかわれたりすることもありました。それで私が傷ついていたときにお母さんはいつも私に『これはじゅりの印だよ 私の娘っていう印だよ!!』となぐさめてくれました。そのおかげで気持ちが軽くなりました。いつもありがとう♡ 私の自慢の母です。
審査員からのコメント
保育園や幼稚園ではみんなが自分の「お印」を持っていて、布の手提げかばんなんかに付けますよね。それと同じなのですね。しかも樹里さんの場合は、お母さんの娘である証明だというのですから、お印の意味は倍加します。それにしても、お母さん、「これはじゅりの印だよ。私の娘っていう印だよ!!」とはなんとうまい表現でしょう。娘さんに対する深い愛情がなければ、決して浮かばない言葉だと思います。この言葉を聞いたとたん、みるみる元気になった樹里さんの顔が思い浮かびます。(橋本五郎)
佳作
- 久我 美麻彩 さん
(福岡県・福岡海星女子学院附属小学校 3年生) - 匿名希望
(岩手県・看護師) - 後上 凛乃 さん
(埼玉県・越谷市立花田小学校 1年生) - 匿名希望
(北海道・函館白百合学園高等学校 3年生) - 匿名希望
(東京都・主婦) - 遠藤 仁美 さん
(宮城県・会社員) - 門脇 夕子 さん
(岩手県・教員) - 山野 浩美 さん
(茨城県・主婦) - 匿名希望
(茨城県・国際教養大学 2年生) - 松浦 歩武 さん
(福島県・聖光学院高等学校 2年生)
夫婦・恋人部門 受賞作品
絆大賞
渡辺 幸彦 さん
(東京都)
55年前にポニーテールの可愛い彼女に惚(ホ)れて結婚しました。陸釣(オカヅ)りで仕留めたはずですが、共に傘寿(サンジュ)(80才)を迎えた今日ではすっかり惚(ボ)けてしまい、時がたつとこうも意味が変るのかと思い、今では妻が鵜匠(ウショウ)になり操られています。米寿に向って支え合い惚(ホ)れ合って過したく思います。よろしく。
審査員からのコメント
すっかり惚けた、と仰いながら出逢った頃の奥様のポニーテール姿はいつまでも色褪せないのでしょう。素敵な想い出もたくさんおありなのだと感じます。さらに仲良く支え合い、まずは一緒に米寿へ向かって過ごされていくお姿も「惚」という漢字に込められたのですね。
「惚」という漢字をいろいろな切り口で上手に表現なさった目の付け所はお見事です!(やすみりえ)
日本漢字能力検定協会賞
竹下 優子 さん
(東京都・主婦)
障害のある私は、将来を悲観し過去を恨みました。しかし夫は医学書を読み漁り私の診察にも付き添い精一杯支えてくれました。全力で戦おうとしてくれていたのです。私は乗り越えようと思いました。そこで大切なのは過去でもなく将来でもなく今を見つめることでした。それを諭してくれた。ありがとう。頑張る。
審査員からのコメント
過去が未来に続く。「今」は中間にあってあっという間に過ぎて行く。しかし、貴女が指摘したように、「大切なのは過去でもなく将来でもなく今を見つめること」であり、そのことが、瞬間の「今」ではなく「永遠の今」となってくれることを願っています。(髙坂節三)
審査員賞
山田 幸夫 さん
(大阪府)
僕たちの38年前の結婚式は雨でした。その後も節目の大切な日には、天の嫌がらせかと思うくらいに、雨や雪に降られて傘が手放せなかったよね。だけど君は、そんな天候を苦にするでもなく、その度に「雨、雪の日のよいことは相合傘のできること」と楽しそうに言う。その笑顔で38年の山谷を越えてきました。ありがとう。
審査員からのコメント
38年間差し続けたふたりの「傘」。いくつもの雨風を一緒にしのいできたことが伝わってきます。
「前向き」な妻と「心配性」の夫という組み合わせならではのエピソードも多々おありなのではと想像が膨らみますが「傘」というこの漢字も、妻の明るく前向きな雰囲気をしっかり表現されているのだと分かります。さらには、二人の仲の良さ、信頼関係を「傘」という漢字が包み込んでくれているようです。いまのお二人の傘の色は、幸せ色に染まっているのでしょう。(やすみりえ)
中杉 莉奈 さん
(東京都・主婦)
「絶対迎えに行くから」
地元へ帰る私に、あなたはそう約束してくれました。
3年後、ほんとに迎えにきてくれました。
可愛いリングと照れた笑顔をたずさえながら。
「今日のごはんは~?」と聞きながら靴を脱ぐ後ろ姿を迎えられる、今日のこの日に感謝です。
これからも幸せな日々を迎えていこうね。
審査員からのコメント
恋人時代、そして結婚した現在のエピソードのいずれにも「迎」という言葉が柔らかく馴染んでいて素敵ですね。「おかえりなさい!」と笑顔で夫を迎える姿も「迎」の向こうに浮かびます。キッチンからは、美味しい夕食の香が漂ってきて・・・。幸せいっぱいの風景です。
お互いの気持ちがしっかりと向き合っている状況には「迎」という漢字がとてもよく似合うのですね。この漢字一文字から、あれこれとハッピーなイメージが広がってきました。(やすみりえ)
吉仲 雅代 さん
(奈良県・主婦)
テレビで夫婦喧嘩していた夫の方が「結婚は妥協ばかりだ」と悪態をついているのを見ていたあなた。独り言のように「妥協ちゃうねん、譲り合いや」と呟いた事をずっと忘れていません。言った事をもうあなたは忘れているけど、あなたの相手の事を思いやる気持ちをとても尊敬しています。
審査員からのコメント
夫の何気ない一言を、大切な言葉としていつまでも記憶している妻。ささやかな日常の中に満ちている愛を感じさせてくれる作品です。夫婦という人間関係にも欠かせない「譲」ですが、この言葉は、さらに幅広い人間関係に通じますね。そして、日本人の美しい心を想像させてくれるようにも思います。自分は一歩引いて、相手を先に。「おさきにどうぞ」という振る舞いもそうですし、出しゃばらずに謙遜やへりくだる精神は日本人の誇るべき精神でしょう。(やすみりえ)
佳作
- 多幾山 昌子 さん
(大阪府・塾講師) - 中村 実千代 さん
(栃木県) - 匿名希望
(神奈川県・パート) - 匿名希望
(千葉県・会社員) - 松田 光子 さん
(広島県・ペン、書道講師) - 奥田 益也 さん
(東京都・パート) - 匿名希望
(福井県) - 神原 茉純 さん
(広島県・県立神辺高等学校 3年生) - 匿名希望
(埼玉県・会社員) - 匿名希望
(北海道・パート)
特別賞
- 佐々木 幹雄 さん
(東京都・会社役員) - 阿部 哲也 さん
(東京都・武蔵野東中学校 2年生)
友人・恩人部門 受賞作品
絆大賞
白戸 まりこ さん
(東京都・渋谷教育学園渋谷高等学校 2年生)
小学6年の陸上大会で羽が生えたような体験をしました。苦手なハードルを飛ぶたびフワッと体が軽く浮く感覚。先生が毎日練習前にこっそりハードルを基準より5cm高く準備して下さっていたと後で知り驚きました。将来私も誰かに羽をつけてあげられるよう、色々なハードルを飛んでいきます。
審査員からのコメント
「苦手」を乗り越え、乗り切り、克服すると幸せな気持ちがやってきます。
その事を教えられる大人が素晴らしい「先生」だと思います。
先生のこっそりの準備が子供に「羽」が生えたような経験をさせました。このような「魔法」をかけられる教師が本物の「先生」なんだと思います。「羽」の字は「」が二つ並んでいます。一つでは飛べないのです。二つの翼をバタバタと、時にはもがきながらも何度も何度もバタバタと繰り返し「習い」「習慣」にしていくと、いつか「翔」べるようになるんですね。小学生で体験して、将来誰かにその「羽」をつけてあげたいと思った子供の心に感動しました。魔法は間法です。絆大賞!!おめでとう御座います。(ゴルゴ松本)
日本漢字能力検定協会賞
今井 包和 さん
(新潟県)
2年兵は殿様、3年兵は神様と言われた時代。貴方は幹部候補生志願の私に「俺は衛生兵で戦車のことをお前に教えられず気の毒だ。ヘコタレズに頑張り、立派な将校になれ。」と激励。温情溢れる言葉忘れません。
審査員からのコメント
「2年兵は殿様、3年兵は神様」その中に在って「少年兵」であった今井さまは筆述に尽くせないご苦労がお有りだったことでしょう。優しく励ましてくれた「衛生兵」の「温」かい一言がどんなにか力を貸して下さったことと思います。そして、その時の感謝の気持ちを99歳におなりになった今も持ち続けておられる毎日の生活に心から敬意を表します。
(髙坂節三)
審査員賞
内野 里香 さん
(鹿児島県・鹿児島市立鴨池中学校 3年生)
もう5年前のこと。ずっと一緒にいて、毎日楽しかったのに、いきなり、何も言わずに引っ越してしまったしゅんのこと思い出す。スケッチ大会の日2人で音楽室からみた大きな真っ赤な夕日。最後に何も言わなかったかわりに赤い折り紙にかいた「ありがとう」。だから、「赤」はしゅんを思い出す。しゅんが「赤」ときいて、同じことを思いだすなら、いつかまた会えるよね。
審査員からのコメント
「赤」色を見ると五年前を想い出す。大好きな人を想い出す。だけどその想い出はなぜか寂しさと重なっている。ずっと一緒にいて、二人で見た音楽室からの夕日は「真っ赤」。「ありがとう」と書いた「赤い」折り紙。その時の映像が僕にも見えるような「赤」の強さ。「赤」は情熱の色。ずっと待っている色。ずっと纏わり付く色。ずっと寄り添う色。「赤」。りかさんにとって好きな人とまた会える色「赤」であって欲しい!!と願います。「赤い糸」は絆です。
(ゴルゴ松本)
下山 福太朗 さん
(鹿児島県・ブリガムヤング大学ハワイ校 3年生)
チェ、大学では良き友として、また勉学のライバルとして僕の側にいてくれてありがとう。韓国では反日本的な雰囲気が蔓延しているそうですが、君はいつも、日本のことを中立的な立場で理解しようと努めていますね。僕はそんな君を心から尊敬しています。僕は君から、他人を“解る”ことの重要性を学びました。ありがとう。
審査員からのコメント
身近にいる「ライバル」と思っている友人から、この大学生は「重要」な事を学びました。「解る・理解する」「解ろうとする・理解しようとする」。名前にある「福」を手に入れた瞬間です!福太朗さんおめでとう!友人のチェさんも何かを感じ、何かを得たことでしょう。言葉や文化や宗教の違いで他人を他国を攻撃するだけで、自分達さえよければいいと思う人や国。実は世界中の人達は解っているはずなんです。「平和が一番」だと。「解る事」は「許す事」でもあるように感じます。未来に向かってしか時は進みません。春になると「雪解け」が始まります。世界中に「解る」という春よ来い!(ゴルゴ松本)
土居 遥 さん
(高知県・黒潮町立佐賀小学校 3年生)
いちかちゃんにこの漢字をおくります。いちかちゃんは、いつも元気いっぱいなので楽しくなるからです。
審査員からのコメント
一緒になると楽しくなる!!その素は「元気」なんですね。それも「元気いっぱい!!」。今のこの気持ちや感性をずっとずっと持ち続けて欲しいですね。
日本人は「気」に包まれています。大気、空気、雰囲気、勇気、気分、気持、天気、気配、気が合う、気品、気質、男気、意気地、やる気、気のせい、気がする・・・気づく・・・まだまだ気になる言葉はたくさんありますが、そんな「気」の大元が「元気」です。はるかさんが贈った「元」の字は見ているだけで僕も元気いっぱいになります。元気があれば何でも出来る!!はるかさん、いちかさん、これからも元気いっぱいで友達でいてね!命!(ゴルゴ松本)
佳作
- 奥原 奈菜美 さん
(長野県・県立穂高商業高等学校 1年生) - 庄崎 秀哉 さん
(福岡県・福岡海星女子学院附属小学校 3年生) - 祖母井 靖 さん
(岡山県・教員) - 上田 侑季 さん
(大阪府・四條畷学園中学校 3年生) - 鬼平 一雄 さん
(栃木県) - 末永 琉衣 さん
(宮城県・石巻市立桜坂高等学校 1年生) - 坂口 聖也 さん
(三重県・会社員) - 谷森 深 さん
(兵庫県・会社員) - 長谷川 諒人 さん
(福島県・柳津町立柳津中学校 3年生) - 小林 大志 さん
(神奈川県・教員)
特別賞
- 中牟田 紗輝 さん
(福岡県・県立行橋高校 2年生)
自分部門 受賞作品
絆大賞
西矢 志帆 さん
(兵庫県・看護師)
この春から夢だった看護師になりました。手と目を合わせて作られた看という字には、手をかざしてよく見ると言う意味があるそうです。毎日疲れて辞めたいと思うこともありますが、この字の意味を心におき、仕事に励みたいと思います。
審査員からのコメント
「看」の漢字の成り立ちは、西矢さんが書かれた通り「目」の上に「手」をかざして遠くを見るというかたちから生まれ、そこから眼前をよく見るという意味が含まれるようになりました。
夢が現実となった今、西矢さんは仕事に疲れたり、それでもがんばろうと思ったりしながら過ごされているご自分の毎日の中で、「看」の字の意味に自分の初心を重ね、先を見て進もうとされている。
改めて「看」の字の成り立ちを知ると、ただじっと見るだけでなく、目の前を確かめるために様々な角度から時に見渡す大切さがあることも問われていると気づかされました。
間もなく二年目の春が巡ってきますね。今回出会われた「看」の字とともにまた新たな一年を歩まれますように、そんな思いを込めて絆大賞を贈ります。(華雪)
日本漢字能力検定協会賞
小林 巧実 さん
(大分県・中津市立緑ヶ丘中学校 3年生)
ぼくは中学3年生だ。今の自分を例えるならなにもせず液もれした電池のようだ。小6と中1のときは電池はまだ新しかったのでよく勉強をしていた。でも中2以降全然勉強しなかった。ここから電池が液もれし始めた。そして今にあたる。中3にもなったのに液もれし続けてはいけない。電池をかえてがんばるしかない。がんばれおれ!
審査員からのコメント
論語に「十有五にして志を立てる」という言葉があります。中学3年生、「志を立てる」難しい時期です。それゆえに将来の自分の在り方を考えなければならないでしょう。丁度「電」池が切れて新しい「電」池が必要な時ですね。「電」池という身近にあるものに託して大事な人生の在り方を考える貴方の着想に感じ入りました。(髙坂節三)
審査員賞
川瀬 宏美 さん
(広島県・主婦)
最近子供たちを怒ってばかり。イライラが顔にでてますよ。鏡を見てください、こわーい顔した鬼がいるから!
審査員からのコメント
漢字は三千数百年前の古代中国でつくられました。その成り立ちには古代中国に生きていた人々の眼差しを見て取ることができます。
「鬼」の漢字の成り立ちを調べると、古代中国では人が亡くなるとこの世の人間とは異なる大きな頭を持った姿になり、そのイメージが鬼と考えられていたそうです。そうした得体の知れないものへの畏怖が鬼のイメージを産み出してきたのだと考えられていますが、思えば鬼はどんなひとの中にも隠れているものを表わしているのかもしれません。日本語のオニは隠(オン)の音からつくられたという説もあります。
誰もが抱えているかもしれない“鬼”を、自分と照らしユーモア溢れる言葉で語り見つめる川瀬さんの感覚に審査員賞を贈ります。(華雪)
野澤 花 さん
(大阪府・東大阪市立枚岡中学校 1年生)
中学3年の私に〝岩〟という漢字をおくります。私は岩のようにがまん強くかっこいい人になりたいです。一度決めたことはきちんとやりとおす、決意のかたい人に。岩は、がまん強いです。川の急な流れにもたえ、たとえけずられたとしても、ねばってたえ続けます。そんなふうに生きれたら、すごくかっこいいです。中3の私に〝岩〟という漢字が似合うことに期待し今がんばります。
審査員からのコメント
三千数百年前の古代中国でつくられたという「岩」の漢字の成り立ちは、山の上に岩石が積み重なっているかたちとされています。当時の人たちにとっての「岩」は、岩そのものだけではなく、そうした岩がある場所も表わす神聖なものであったようです。
長い時間、多くのひとたちの間で使われながら生き延びてきた漢字には、様々なイメージや意味が積み重ねられてきました。野澤さんにとって「岩」の字は我慢強さのシンボルなのですね。ひとつの漢字に何かを思い浮かべるとき、そこにあるのはわたしたち自身の気持ちの有り様かもしれません。
「岩」の字を傍らにこれからの中学生活を過ごされる野澤さんを応援し、審査員賞を贈ります。(華雪)
松本 禎子 さん
(大阪府)
どちらかと言えば弱虫で引っ込み思案な性格であった私。父を中一で亡くし、残された家族と生活するのが精いっぱいの人生でした。それでも母親の介護を思い残すこと無くやり終え、自分で大学まで行き、定年まで働きました。
還暦を迎え1歳から生まれなおし、学び遊び鍛え死ぬその日まで人生を全うしていきます。
審査員からのコメント
「還」の漢字を字典で調べると、その成り立ちは古代中国の儀式に遡ります。それは死者の衣装の襟元に玉(ぎょく)を置き、そこに生命の証である目を書き込み、そのひとが生き返ることを願う様子を描いているとされています。
「弱虫で引っ込み思案な性格」だったという松本さんが還暦を迎え生まれなおされるまで過ごされてきた時間を、この「還」の字の成り立ちと重ね合わせながら思うと、生まれた干支にかえることを意味する還暦もまた人が生き返ることを願いつくられた言葉なのだと教えられたように思います。
松本さんが「生まれなおし」、これからはじまる時間がますます充実したものになるよう願い、審査員賞を贈ります。(華雪)
佳作
- 吉 天瑜 さん
(東京都・豊島区立豊成小学校 6年生) - 山元 郁乃 さん
(東京都・主婦) - 匿名希望
(神奈川県・サービス業) - 山本 佳恵 さん
(北海道・会社員) - 藤井 翔大 さん
(鹿児島県・姶良市立加治木中学校 2年生) - 匿名希望
(愛知県・会社員) - 瀬野 南美 さん
(京都府・舞鶴市立青葉中学校 2年生) - 宇都宮 夕子 さん
(埼玉県・主婦) - 椎名 花琳 さん
(茨城県・県立水戸聾学校 中学部 3年生) - 福島 僚 さん
(福岡県・福岡海星女子学院附属小学校 3年生)
※ 受賞者の都道府県、学校名、学年、職業は応募当時のものです。
※ 基本的には応募作品の原文をそのまま掲載しておりますが、一部修正を加えている箇所がございます。ご了承ください。