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実際に起こり得る問題や違和感を通して、考え方や習慣、課題解決手法などを養えるのが大きな魅力です。
文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援事業」ならびに「留学生就職促進プログラム事業」に採択された東洋大学。グローバルリーダーの集うアジアのハブ大学を目指し、グローバル人財育成ならびにキャリア教育において先進的な取り組みをされています。
『にっぽんのカイシャ』を採用した狙いや具体的な活用方法をお聞きしました。
Q.『にっぽんのカイシャ』はどのような授業で使用されていますか?
ビジネス日本語課外集中講座と映像教材で活用しています。ビジネス日本語課外集中講座は、夏、秋、春に実施し、夏は「ビジネス日本語の学習法」「ビジネス日本語の技能別トレーニング」「ビジネス日本語能力テスト対策」など全17講座を開講します。学内のみならず、学外留学生にも開放し、2017年度はのべ756名の申し込みがありました。この中で『にっぽんのカイシャ』を指定教材、あるいは推薦教材として活用しています。また、映像教材においては「ビジネス文化理解」のユニットで『にっぽんのカイシャ』を紹介しました。
Q. なぜ『にっぽんのカイシャ』を採用されたのでしょうか?
グローバル人財の育成に取り組む本学にとって、『にっぽんのカイシャ』の活用を決めた理由は4つあります。
①第一に、ケースメソッドを取り入れ日本のビジネス習慣や文化、そして言葉の使い方について学ぶことのできる本教材はその目的に合致している数少ない教材でした。本学の留学生は、アルバイトやインターンシップでの経験はあるものの、本格的に日本企業で働く機会が少ないため、日本のビジネス場面で働く外国人財が実際に体験したことやよく起こる事例を扱った教材は非常に効果的であると考えています。
②第二の理由は、教材の構成がアクティブラーニングを取り入れた本学の日本語教育と相性が良かったという点です。「読む前に」で活動のウォーミングアップをし、マンガで興味や関心、トピックに対して積極的に考える姿勢を喚起し、「考えよう」で問題点や理由、背景について議論することができます。
③第三の理由は、「オフィスのことば」「解説」「使ってみよう」「会話を作ろう」といった、言葉の運用力の育成に役立つトレーニングが多角的に設けられている点が、本学の留学生の基礎力と表現力の養成に役立つと考えたからです。
④第四の理由は、「ビジネス日本語にチャレンジ!」にあるように、BJTに通じる設問も最後に設けられており、往々にして知識や技術の詰め込みになってしまいがちな試験対策を、ことばと文化の総合的学びの中に位置づけられる点です。教材で紹介されている、実際に企業で働く外国人財と採用企業側との間に生じ得る問題や違和感を読みながら、背景にある考え方や習慣、文化の比較等を通して課題解決の手法や得られる示唆、今後同様の問題に直面した際のリスク回避力を養うことができるというのは、グローバル人財育成に取り組む本学における日本語教育プログラムにとって、大きな魅力です。
Q. 授業ではどのように活用していますか?
授業では、教材をそのまま読んでいく方法ではなく、「反転授業」で用いています。具体的には、「読む前に」を読んでくることを事前課題とし、教室では「何が『にっぽんのカイシャ』に描かれたビジネス場面で論点になっているか」「主人公はどうすれば良かったか」を全体で考えます。記述されているテーマに学生の意識を向けるという意味では、これだけでも十分効果があります。学生の中には、日本企業への就職希望者に加え、起業を目指す人もいます。彼らにとっては、日本企業の組織論を学ぶための題材にもなるようです。
他にも、「会話を作ろう」を事前課題とし、それを教室内でグループになって確認し合うこともあります。
このように、学習者が基礎的な知識の習得を、教材を用いて自ら主体的に行います。その上で、自宅で得た情報やアイデアを教室に持ち寄り、対話形式で応用練習や発展活動に取り組むことを通して学びます。
※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。