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中国ビジネスの拡大には中日、中英バイリンガル人材が欠かせません
総経理
■中国人スタッフに求められる日本語能力
日産トレーデイング株式会社は、日産自動車の100%出資子会社で、自動車関連の部品・原材料・設備機械、及び完成車両のサプライチェーンとトレーデイングを担う商社であり、当社はその中国現地法人です。中国国内に9か所の拠点があり、従業員はおよそ240名が在籍しています。そのうち日本人の駐在員は5名で、その他は全て中国人の現地スタッフが勤務しています。 当社の売上構成比は、輸出46%・輸入35%・国内19%となっており、輸出入が全体の8割強を占めています。その窓口となるのは日本本社であり、業務において日本語の使用は必要不可欠です。 なお、日産トレーデイング全体では世界15か国に約1,500名の従業員がおり、基本的には英語を共通言語として業務が行われていますが、こと中国と日本の間のやり取りに関しては、日本語を使用した方が効率良く、同じ漢字圏であり、日本のアニメやマンガに慣れ親しんだ中国人とのコミュニケーションは、日本語の方がお互いの理解がスムーズだと感じます。 また、中国に進出している日本のサプライヤーが集まる会議などの場面でも、当社の中国人スタッフが同時通訳や議事録作成などの役割を担います。各サプライヤーの主要ポストは日本人が占める割合が高く、会議では高度なビジネス日本語がやり取りされます。こういった際にも、中国人スタッフの日本語能力が求められます。
■BJTの活用方法
当社の中国人スタッフの採用に関しては、英語もしくは日本語のいずれかを話せることを必須条件としています。日本語については、日本語能力試験(JLPT)のN1取得が必須条件ですが、N1を取得し、且つ大学で日本語を専攻してきた人材でもビジネス上で求められる日本語能力レベルには達しておらず、入社後に、実務を通じて、さらに日本語能力を上げてもらうことが必要です。 当社は2003年に設立しましたが、当時は少数精鋭で、ビジネス上十分な日本語能力を持った人材だけを採用していました。しかし、その後の中国経済の発展により2010年頃からビジネス規模が急拡大し、人材を大量に採用する必要が出てきました。そのため、日本語が完璧でない人材であっても採用せざるを得ない状況となりました。よって、日本語力が不十分であっても、優秀な人材であれば採用して、入社後に育成するスタイルへと変わっていきました。そこで、社内でビジネス日本語能力向上の機会を充実するために、2011年からBJTの団体受験を行うことにしたのです。 BJTは、新入社員については全員受験必須としており、2年目以降や中途入社のスタッフについても、希望者を受け付けています。受験料は、初回受験については全額会社負担、2回目は3割を会社負担としており、TOEICも同様です。 また、当社のスタッフは、もともとN1を持って入社してくるわけですが、欧米諸国を相手として主に英語を使用する部署に配属されてしまうと、日本語を使う機会が減り、せっかくの能力が衰えていってしまいます。そういったスタッフも、ジョブローテーションにより、いつ日本語が必要な仕事に携わるか分かりません。彼らの日本語能力の維持向上のためにも、BJTを積極的に受験して欲しいと思っています。
■これまでの成果とこれからの展望
当社では、社内で表彰大会を行い、模範社員を表彰すると同時に、金一封を贈呈することで、スタッフのモチベーション向上を狙いとしています。その際の表彰基準のひとつとして、TOEIC800点以上と並んで、BJTのJ1(530点)以上を定めています。営業成績や業績などの直接的な仕事の成果は人事考課で評価しますが、語学や資格などの仕事の成果に間接的に影響するものは、この表彰大会で評価する仕組みです。 BJTを導入してからこれまでの10年間で、計258名のスタッフが受験をしました。各レベルの取得状況は、J1+が7名(取得率2.7%)、J1が46名(同17.8%)、J2が184名(同71.3%)であり、J2以上の取得率が91.8%となっています。 今後は、日本に駐在するスタッフには駐在前後にBJTを受験してもらい、どのくらい点数が伸びたかを測定していきたいと思います。欧米諸国に駐在する際のTOEICと同じ使い方です。能力の伸長度を見える化することで、それを見て刺激を受けて自分も勉強しようという、スタッフの意欲向上につなげたいと考えています。また、BJTをはじめとした語学研修制度の拡大についても検討していきたいと考えております。 今後もますます日本のメーカーが中国で生産して世界へ輸出するという流れが加速するでしょう。その中で、高度な日本語を使える人材を育成することは、非常に重要な課題です。中国において、日本語と英語を使える人材のニーズはますます高まっていくと考えています。
※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。