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企業・教育機関
より実践的なビジネス日本語を身につけ就職を有利に
日本語通訳科
■導入前の課題
本校の日本語通訳科は、留学生を対象とした学科です。卒業後は、日本企業への就職を目指しています。 本学科では、以前から、日本語能力試験(JLPT)に取り組んできました。しかし、例えN1を取得しても、身につく能力には若干の物足りなさを感じていました。というのも、中国や韓国などの漢字圏の学生であれば、N1は意外と簡単に取得できてしまいます。また、企業面接の際に、JLPTを取得していることをアピールしても、「実際にはどれくらい日本語をしゃべれるのか?コミュニケーション能力はどれくらいなのか?ビジネス系の資格は持っているか?」等の確認をされることがしばしばありました。そんな経験から、より実践的なビジネス日本語能力を証明する物差しが必要だと感じていました。 当時からBJTのことは知っており、取り組んだ方が良いと感じながらも、難易度が高く、N1を取得していないと太刀打ちできないという先入観がありました。ですが、いざ問題を解かせてみたところ、N3の学生がN2の学生よりも高い点数が取れる場合があるなど、決して日本語上級者でなくては対応できないものではないと実感できたのです。
■取組内容
日本語通訳科の学生には、卒業年次にBJTの受験を必須化しています。卒業要件にも組み込んでおり、N3未取得者では300点以上、N3取得者では400点以上、N2取得者では480点以上を要件としています。 対策指導に関しては、まずは1年次の授業「ビジネスマナー」において、テキスト『マンガで体験!にっぽんのカイシャ』を活用し、ロールプレイ中心の授業を行っています。まずは、掲載されているマンガを、学生に登場人物の役割を振って読ませます。続いて、“考えよう”コーナーの問題演習をした後、学生にペアを組んでもらい、“会話を作ろう!”コーナーを検討、実践してもらいます。その後、代表ペアを選んで、皆の前で発表してもらいます。学生たちも、とても楽しんで取り組んでいるようです。また、「このテキストは、誰が指導しても均質な授業が展開できる」と、先生方自身も非常に喜んでいます。 また、2年次には週2コマの授業「BJT対策」を実施しています。テキスト『模擬テスト&ガイド』を活用し、問題演習と解説を繰り返しています。BJT受験に向けて、より本番に近い演習を行っています。
■導入後の変化
BJT導入後、学生たちの日常のマナーにも変化が見られるようになりました。例えば、教員に話しかける際、留学生は単刀直入に本題に入ることが多いのですが、その前に「今、ちょっといいですか?」と確認を取ってくれるようになりました。こういったことは、日本独特な慣習かもしれませんが、ぜひ就職する前に身につけておいて欲しいマナーです。そうしないと、いざ社会に出てからそれが必要な場面に直面しても、咄嗟には出てこないひと言でしょう。 また、意外なビジネス表現に落とし穴があるという、新たな課題に気付くこともできました。例えば、学生達は、「見積書」「稟議書」「取引先」などの、基本的なビジネス語彙を理解できないことに気付きました。こういった語彙は、JLPTではあまり出題されないのですが、BJTでは頻繁に出題されるのです。BJTに取り組むことで、初めて出会うことができたビジネス語彙だと言えます。 さらに、日本人のビジネス会話では、会議などを終える際の常套句として、「じゃあ、そういうことで」という表現を使うことがあります。こういった表現も、学生たちにとっては「何がそういうことなのか?」と疑問符が付いていました。しかし、BJTに取り組み始めてからは、形式的な挨拶として、きちんと認識できるようになったのです。 実際の就職活動においても、良い効果が出始めています。某ホテルに就職した卒業生は、JLPTのN2に加えてBJTのスコアも履歴書に明示したところ、人事部の方から好評だったそうです。 さらに、入社後に受験するビジネスコミュニケーションに関する試験でも、BJTで学習したことが役に立ったと聞いています。また別の、ある貿易会社に就職した卒業生は、「在学時にもっとBJTの勉強をしておけばよかったと、今になって実感しています」と言っていました。
■今後に向けて
2021年度からは、BJTに加えて、漢字検定の受検も必須化していきたいと考えています。1~2年次の選択必修科目に組み込み、漢字検定とマナー系の検定の受検を必須とする予定です。これらを通じて、学生達の日本語の語彙を、少しでも増やして行ければと思っています。 本校は、「ビジネスマナーがしっかり身につく学校」であると自負しています。BJTや漢検への取り組みなどを通じて、そのブランド価値をさらに高めていきたいと考えています。学生のうちにビジネスマナーを身につけたいと考えているみなさんは、ぜひ本校に入学してきてください。
※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。