本校は、スペシャリストとしての語学力、専門技能、ビジネススキル、コミュニケーション力を養成し、日本国内だけでなく、世界を舞台に活躍できる人材を輩出することを目標にしています。全学科（通訳翻訳科・国際日本学科・国際コミュニケーション学科・日本語科）でクラス担任制を敷いており、入学から卒業、場合によっては卒業後まで学生一人ひとりを手厚くサポートします。

　学生数は、例年、専門課程と日本語科とを合わせて400数十名、10代～50代まで幅広い年代・国籍の方々が学んでいます。本校で学ぶ留学生たちを見ていると、同じ国籍の学生たちだけで集まり、母国語を使ってコミュニケーションを取ってしまいがちです。それでは日本語の上達を阻害するうえ、他の国から来た学生は疎外感を覚えてしまいます。そんなときには「授業だけで日本語は身につかない。恥は捨てて日本語で話そう」と注意を促します。初めはたどたどしいですが、授業以外でもさまざまな国籍の生徒同士が日本語でコミュニケーションを取ることで、徐々に会話が滑らかになって、互いに打ち解けていくのがわかります。

　私が担当する国際日本学科ビジネス日本語コースでは、国内企業や母国の日系企業で働くことを念頭に、ビジネスシーンを意識し、①課題を達成する能力②問題を発見する能力③異文化コミュニケーション力の3つの力がバランスよく身につくよう実践的なビジネス日本語の指導を行っています。やはり、語学力を使って何がしたいかが明確な学生は、年齢によらず伸びるのが早いですね。目的意識の強さが、そのまま学ぶモチベーションの高さに直結しています。ただ、母国でも日本でも就業経験がない学生は、日本語がかなりできるようになっても、ビジネスシーンをイメージすることが難しいようです。

　それを補うための一例として、現役のビジネスパーソンをゲストとしてクラスに招き、ケーススタディを行う授業があります。日本企業で外国人材が関わった、実際のトラブル事例を取り上げ、なぜトラブルになったのか、どう解決するか、などを学生と一緒になって話し合います。学生たちからは、日本人ゲストが思ってもいなかった視点が出てくることも多く、学生・ゲスト双方にとって異文化理解の良い機会になっています。また、併せて『にっぽんのカイシャ』も活用して、より多くの事例に触れさせるようにしています。

　BJTは2010年頃から継続的に活用しています。日本語能力の向上はもちろん、日本のビジネスにおける場面や状況、商習慣などを理解する力を養ううえでも、大変役に立っています。留学生は、日本語能力試験（JLPT）のN1を取れば十分だと思って入学してきますが、実際に仕事の場で円滑にコミュニケーションを取るには、もっと勉強しないとダメだと気づきます。そこで本校では、BJTと日本漢字能力検定（漢検）を1年次と2年次に1回ずつ受けることを義務づけています（受験料は学校負担）。BJTは600点以上で特別追加単位認定、漢検は準2級合格が到達目標です。就職活動で企業に実践的な日本語コミュニケーション能力をアピールできるよう準備を進めています。彼らの頑張りの結果、日本での就職を希望する学生の８割以上が就職を実現しています。

　留学生はみんな、それぞれの夢に向かって「自分を変えたい」と願って、貴重なお金と時間をかけて本校で学んでいます。在学中だけでなく、社会に出ても諦めずに努力を続けていれば、必ず道は拓くことができます。自分を表現することと、相手を尊重すること、つまり多様性を認めて変化し続ける力が、夢を叶える原動力になります。そのサポートをする私たちも常に真剣勝負です。企業が求める人材の変化、社会の変化を読み取って、私たち学校も変わり続けていかなければと思っています。