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ビジネス日本語力と社会人基礎力を兼ね備えた人財育成の到達指標としてBJTを活用しています

武蔵野大学大学院 村澤 慶昭 様

武蔵野大学大学院
大学院言語文化研究科 言語文化専攻 ビジネス日本語コース /グローバル学部 日本語コミュニケーション学科 教授
村澤 慶昭 様

■高度職業人の養成に必要な「ビジネスジャパニーズ」

 本学がBJTを活用し始めたのは、2006年に大学院にビジネス日本語コースを新設したことがきっかけでした。これは国内唯一の、高度職業人の養成を目的とした、外国人留学生100%の大学院の専攻コースです。本コースでは、アカデミックジャパニーズの能力基準として、JLPTのN1の合格等を出願資格の条件にしています。そのため、入学後に目指すべき日本語能力の指標として、JLPTの次の目標が必要でした。また、高度職業人の養成というコースの目的からしても、アカデミックジャパニーズではなく、ビジネスジャパニーズを身につけさせる必要性がありました。そこで本コースでは、その到達指標としてBJTを活用していくことに決めたのです。
 ビジネス日本語コースを開設してから数年後、大学のキャンパス増設と学部の再編があり、グローバル学部が誕生しました。この中には3つの学科がありますが、英語・中国語(留学生は母語)・日本語を駆使してグローバル社会で活躍するトライリンガル人財の育成を共通の目標としています。また、私の所属する日本語コミュニケーション学科では、日本語教育学と観光学の専門性を強みに、広く世界で活躍できる人財の育成を目的としています。現在、グローバル学部の日本語コミュニケーション学科、グローバルコミュニケーション学科においても、就職を見据えた日本語力を担保するための物差しとして、年2回の受験機会を確保しBJT受験を必須・推奨しています。
 院生、学部生共に、自己実現のための自分の日本語力の到達目標の明確化、そして努力の証として、BJTは一つの有効な指標だと思います。


■BJT受験に対するサポート

 大学院ビジネス日本語コースでは、在籍院生全員に、春と秋の年2回、修了までの4回のBJT受験を原則必須としています。学部の対象2学科の留学生に関しては、年1回、卒業までには最低4回のBJT受験を原則必須としています。大学院、学部共に、大学が受験料を一部補助し、院生・学生の負担を軽減するサポートも行っています。また、到達目標を、院生はJ1+、学部生はJ2以上に設定しています。
 通常の授業自体は、BJT合格を目標とはしていません。あくまでも自身の日本語力の指標として活用しています。しかしながら、受験にあたってはそのノウハウもあることから、受験の前には、院生・学部生が任意参加可能な「BJT対策講座」を別途無料開講しています。市販のBJT教材を複数活用する一方で、独自作成の模擬問題なども使用しながら、問題演習を中心に講座を行っています。
 ビジネス日本語コースでは、すべての授業内容がビジネス日本語やビジネスに関連するものであるため、対策講座の内容が、授業内容の一部確認としても機能しています。また学部の授業でも、日本のビジネスや文化背景などを学ぶ機会が多くあるため、単なる知識やテクニックで高得点を取るというのではなく、「実力」を測るひとつの指標としてBJTを位置づけることを、私たちも意識しています。


■BJTを通じて身につく実践力

 院生・学生達にとっては、大学院や大学に入ってからもJLPTに続く次の目標ができ、励みになっているようです。特に、早い時期から就職活動を始めるような目的意識の高い院生・学生ほど、BJTに対しても積極的に取り組み、高い点数を取る傾向にあります。つまり、BJTは院生・学生の意識や動機付け、そして自律学習を高めるための一助としても機能していると思います。本学の留学生の希望進路実現率も高いと思います。もちろん、進路実現には企業研究や自己分析など他にも必要な要素はたくさんありますが、BJTを通じたビジネス日本語能力育成も少なからず貢献していると感じます。
 BJTを受験した学生からは、「とにかく時間が足りなかった」という感想を聞くことが多くあります。BJTには情報量が非常に多く、問題を解くのに制限時間があるため、じっくり取り組んでいては間に合いません。必要な情報を的確に読み取って、素早く処理する能力が求められます。それはまた、仕事においても必要な能力です。授業のタスクとはまた違った緊迫した時間内に行う日本語での理解力や処理能力養成は、就業後にも必ず役立つ能力ですので、BJTの活用は有効だと思います。


■資格試験に挑戦する意味

 今後の課題は、時代に即して必要とされる能力を、どのように見極めていくかだと思います。例えば、AIを使った各種サービスやオンラインの各種システムなどでは、すでに多言語サポートが開始されています。また、小学校などで導入され始めた電子教科書などを見ると、漢字には自動でルビを振る機能がついていますし、多言語翻訳機能がついたものもあります。加速度的に進化・発展する技術社会において、日本語を学ぶ意味がどこにあるのか、特にビジネスを日本語で行う意味はどこにあるのか、本当に必要なスキルとは何なのか、などについて、私たちは常に見つめなおし考えていく必要があります。
 語学に関連する分野は、近い将来AIなどの技術に取って代わられるとも言われていますが、だからといって「学び」を放棄してはならないと思います。資格試験は、実力を測る指標のひとつではあっても、資格の取得を目指して学ぶ過程において得られるもの、努力を通じて得られるものこそが、資格試験への挑戦を意味あるものにしていると思います。その意味でも、これからも、資格試験に取り組む本当の意味を見失わずに、BJTも適切に活用していきたいと考えています。

※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。

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