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企業・教育機関
BJTを卒業要件にして学習のモチベーションアップを
国際情報系情報ビジネス科
■BJTの活用方法
本校の情報ビジネス科は、卒業後、日本企業への就職を目指す学科です。 本学科では、2013年度より、2年次にBJTを受験することを卒業要件のひとつにしています。J2・420点以上の取得を目標としていますが、あくまで受験することを要件とし、点数は必須ではありません。あまりハードルを上げ過ぎると、受ける前から怖気づいてしまう学生もいるためです。BJTは、あくまで学生の到達目標として定め、ビジネス日本語を学習するモチベーションアップのための手段であって、高得点を取得することそのものが目的ではありません。学習や受験をすることそのものに価値があると考えています。 それでも、受験した学生のJ2以上到達率は、70%以上と高い水準を維持しています。努力して得た結果ですから、就職活動時の履歴書やエントリーシートには、試験の正式名称「BJTビジネス日本語能力テスト」と獲得点数を明記するよう指導しています。そうすれば、例え企業側がBJTを知らなくても、きっと調べてくれるでしょう。試験の内容を知れば、企業側は必ず評価してくれると思うからです。
■BJT導入の背景
本校では、BJTを導入する以前から、日本語能力試験(以下、JLPT)の取得を推奨してきました。しかし、学生の就職活動時に企業から、「JLPTでN1を取得していても、必ずしもビジネスで通用する日本語コミュニケーションがとれるわけではない」という不満を聞くことが多くありました。実際に本校でも、N1取得者であってもJ2すれすれの点数しか取れない学生も存在します。学生たちが就職後にしっかり活躍できる状態を目指すためには、JLPT以外に実践的なビジネス日本語の到達目標が必要だと感じたのです。 また、既にN1を取得してしまった学生は、その先の学習目標がなくなってしまいます。しかし、日本企業で活躍するためには、N1レベルでは不十分であり、さらに上を目指して学習してもらう必要がありました。そんな学生にとって、BJTは最適な目標だったのです。
■ビジネス日本語の指導方法
本校では、BJT対策と連動させながら、幅広くビジネス日本語を身につけられるような指導を行っています。 ビジネス日本語の指導は、最初は全てが手探りでした。まずは、教員自身がBJTの出題内容を知ることから始めました。BJTに出てくる語彙は、社会に出る前の学生にとっては馴染みが薄く、また興味も持ちにくいものが多くありました。まずは、ビジネスで使われる語彙について、学生に興味を持たせる工夫が必要でした。 そこで、学生がよく見ているドラマや新聞の記事など、学生にとって身近なメディアに出てくる語彙から取り上げていきました。例えば、ドラマ『半沢直樹』に出てくる「融資」「昇給」などの語彙です。また、毎年必ず題材として取り上げるのが、「初競り」の新聞記事です。漁獲量などの条件によって価格が変動し、それについてグラフなどを交えて説明されている記事は、ビジネス日本語を学ぶのにとても効果的でした。 また、BJTに出てくる語彙は、語源を調べると面白いものも多くあります。例えば「瀬戸際」や「軒並み」など、その意味や成り立ちと一緒に覚えさせることで、学生たちにより深く印象づけることができます。教室で覚えただけの語彙は、日常生活の中で使わないと忘れてしまい、いざという場面では咄嗟には出てこないものです。そんな場合も、意味や成り立ちと一緒に印象づけて覚えていれば、少し考えることで思い出すことができます。語彙も数学の公式と同じで、丸暗記することは難しく、そのままでは使えない知識ですが、意味が分かっていれば、実際に使える生きた知識となるのです。 加えて、そうして覚えた語彙は、繰り返し使う場面を提供するよう意識しています。ビジネス日本語の授業以外の場面でも、折に触れて覚えた語彙を引き出して使わせるように意識しています。また、希望者を対象に、長期休暇中にはインターンシップの機会も提供しています(コロナ禍以降はオンラインが中心)。実際に働く場面を通じて、覚えた語彙を使用する体験をしてもらっています。インターンシップに行った学生が、「教えてもらった語彙が実際に使われていたよ」と報告してくれたこともありました。語彙の暗記と実際に使ってみる経験のバランスが重要です。 また、ビジネス文書作成の授業では、文章の構造を理解させる指導を行っており、そのことがBJTのセクション3・読解問題の対策にもなっています。BJTの読解問題は難しいと感じる学生も多いのですが、きちんと構造を理解するコツさえつかめば、案外解けるようになるものです。
■BJT導入後の変化
BJTの受験を卒業要件化した後は、学生たちのモチベーションは確実に上がっていると感じます。高得点が取れた学生は素直に喜びます。高得点を取得した学生ほど、就職先で問題なくコミュニケーションが取れているようです。また、J1の上位以上の学生については、企業から学生の日本語コミュニケーションに能力に対し高評価のコメントをいただくことが多いです。企業側の満足度が高い証拠かと思います。 今後は、覚えたことを使えるような体験機会を、もっと増やしていきたいと思っています。学生たちには、BJT対策などを通して培ったことが、社会に出て役立っていると実感をして欲しいと願っています。
※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。