「今、あなたに贈りたい漢字コンテスト」を活用した授業

第10回「今、あなたに贈りたい漢字コンテスト」団体賞受賞団体
浪速高等学校

取材した学校

竹村 志津子 先生

浪速高等学校

竹村 志津子 先生

取材日2023年3月20日

「今、あなたに贈りたい漢字コンテスト」に取り組んだ理由は何ですか。

「今、あなたに贈りたい漢字コンテスト」のコンセプトに共感して、高校1年生の国語の授業に導入しました。2022年度から新学習指導要領(注1)が実施され、これまでの「国語総合」という科目が「現代の国語」と「言語文化」という新しい科目となりましたが、高校1年生はこの新課程となった最初の学年です。より言語活動に重きを置くことになった「現代の国語」では、色々な言語活動に取り組ませており、漢字コンテストもその一つとして取り入れました。言語活動はChromebookで行うことが多いのですが、漢字コンテストはしっかり「考えて書く」ことの良い機会になりました。“入力”の場合、漢字は“変換”作業ですが、“書く”場合は“生み出す”もの。生みの苦しみを通じて語彙力の大元である漢字の力が強化できました。

授業の流れを教えてください。

①特設サイトや過去の受賞作品から、漢字コンテストについて理解する。

漢字コンテストの特設サイトを電子黒板に映し、クラス全員でコンテストの概要や趣旨を理解しました。小学生部門、中学生部門、高校生部門の過去受賞作品を観たときは、作品ごとに感心する声や笑いが起きるなど、クラス全体で鑑賞することで、より関心が高まったように思います。高校生なので、純粋に楽しむだけでなく、審査員コメントに注目するなど、受賞作品の傾向を分析する生徒もいました。


生徒たちにとって、自分の書いた字がそのままWEB上に掲載され、多くの人の目に触れるということが驚きだったようです。SNSで発信する機会は多くても、自分の字がそのまま載るというのは新鮮で、丁寧に書くことの動機付けになりました。実際に作品を制作する段階でも“多くの人の目に触れる”ことを意識し、しっかり推敲して丁寧に清書する生徒が多く見られました。

②漢字の調べ方や、作品の考え方を伝える。

特設サイトに掲載されている、「書き方スリーステップ」を参考に作成したプリントを配り、考える手順を伝えました。また、生徒がひとり一台持っているChromebookに、「漢字ペディア」を配信し、漢字を調べるように促しました。オリジナリティを出そう、と考える生徒が多く、「漢字ペディア」でさまざまな漢字を調べていました。

③贈る相手を決め、作品を制作する。

漢字コンテストのメッセージは「漢字一字を選んだ理由」ではなく、「相手に贈る文章」であると伝えました。その結果、相手に自分の気持ちが伝わるように書くことを意識できました。国語の教材では、選んだことに対しその理由を説明させることが多いので、普段と異なる文章を書く漢字コンテストは、貴重な機会となりました。

コンテストに取り組んでよかったことや、先生の思いをお聞かせください。

このコンテストの良い点は、“このメッセージをあなたに贈ります”というコンセプトです。他者(または自分自身)に伝えたいことって何だろう、どのように伝えよう……と一生懸命考える時間は、どのクラスでも温かい雰囲気に満ちていました。本当に素晴らしい取り組みになりましたので、来年は中学校にも広げて継続するつもりです。


最近では、自分で考えて自分で書く機会が少なくなっているように思います。しかし、大学入試では小論文が増え、面接が行われる場面もあります。そのようなとき、自分の考えを、自分の言葉や文章で表現できる力は重要です。情報化社会だからこそ、このような人間らしい活動を、今後も大切にしたいと思います。


注1:子どもたちの「生きる力」を育むことを目標とし、約10年ぶりに改定された。「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力など」「学びに向かう力、人間性など」の3つの柱からなる「資質・能力」を総合的にバランスよく育んでいくことを目指している。


「今、あなたに贈りたい漢字コンテスト」を活用した授業

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