「今、あなたに贈りたい漢字コンテスト」を活用した授業
大阪市立豊仁小学校(大阪府)
取材した学校
大阪市立豊仁小学校
4年生 担任
松下隼司 先生
取材日2022年7月7日
「今、あなたに贈りたい漢字コンテスト」(以下、「漢字コンテスト」)に取り組まれた、きっかけを教えてください。
毎年、漢字に親しみを持ってもらうための授業を行っています。新出漢字の学習だけだと、勉強が苦手な子は「やらされている」と感じてしまうからです。「漢字コンテスト」は、6年ほど前に初めて活用しました。4年生の一学期に、漢字辞典の使い方を授業で習うので、「漢字コンテスト」は4年生の二学期にぴったりの題材でした。
授業の流れを教えてください。
[事前準備]資料を用意する
- 応募用紙…早く完成した子が、2枚目、3枚目と書けるように多めに用意します。
- 過去の受賞作品…書くことが苦手な子には、お手本が必要なため、過去の受賞作品を用意することはとても大切です。手元でじっくり見られるように、いくつかの作品を印刷して配布します。
- 下記①で使用する、過去作品を用いて作成したスライド(授業資料PDF参照)
①過去受賞作品を読む
過去の受賞作品をクイズ形式で紹介します。贈った漢字を隠しておき、文章(メッセージ)だけを読んで「どんな漢字を贈ったでしょう」などを考えてもらいます。
②漢字を贈る相手を決める
漢字を贈りたい相手を考えます。子どもたちに家族、友達、先生など案を出してもらい、各自誰に贈るのか決めます。なかなか決まらない子には、「1枚目は先生に書いてみよう」とすると、指導がしやすいです。なかなか書き出せない子は、贈る相手をひとり決めると、考えやすくなると思います。
③作品を書く
- 作品を書いてもらい、書き終わった子には提出してもらいます。提出された作品は、その場で読み、よいところを伝えます。
- どうしても書けない子には、過去の受賞作品を写しても構わないので1枚書いてもらうようにします。もしくは、誰かとの共作としてまずは1作品書けると自信になると思います。親に書く人、友達に書く人、と対象が同じ子が集まって書くのも、他の人がどんな作品を書いているか分かり、参考になると思います。
- 低学年の子や、作文が苦手な子は、過去作品を音読・視写する他、「お世話になっているお家の人に『体』という漢字を使って手紙を書いてみよう」など、贈る相手と贈る漢字一文字をある程度、決めてあげるほうが安心して取り組めるかもしれません。
児童の皆さんの様子はいかがでしたか。
普段の作文関係の学習だったら、短時間でさらっと仕上げたがる子が、ものすごく時間をかけて丁寧に考えたり、書いたりする姿が印象的でした。「誰に贈ろうかな」「何という漢字を贈ろうかな」「どんな手紙を書こうかな」と真剣に取り組む姿に感動しました。
また、人だけでなく身近な物へ感謝の気持ちを伝えたいという子もいて、子どもの純粋で柔軟な感性に、私も心が洗われるような気持ちになりました。
授業後、休み時間になると真っ先に遊ぶ子どもたちが「先生、休み時間も続きをやっていいですか?」「先生、給食準備の待ち時間にやっていいですか?」「(応募用紙を)もう1枚ください!」と自ら進んで意欲的に取り組む姿に感心しました。
授業を行った効果について、先生のお考えをお聞かせください。
「誰に贈るか」をじっくり考えることは、これまで自分がどんな人たちと関わってきたかを思い返す機会になりました。また、「どんな漢字一文字を贈るか」を考えることは、贈る相手のことを深く考える機会にもなりました。
漢字といえば国語の授業と考えがちですが、このコンテストについては、道徳や学級活動、総合、生活科に関連させることができると改めて思いました。授業後は学級の雰囲気がとても温かくなりました。
「漢字コンテスト」は、席替えや行事の前後、二分の一成人式など、さまざまなきっかけで活用できると思います。1回の授業だけではもったいないので、日頃から書き溜めておき、自信作をコンテストに提出するのもよいかもしれません。