漢字教育サポーター紹介制度
サポーター活動例
丹羽源氏でたどる「系図から読み解く源氏物語」
サポーター情報
登録番号:100189
活動地域:奈良
対象:成人一般
活動場所:公民館
いつ、どのような活動をなさったのですか?
2024年度、生駒郡斑鳩町の中央公民館で月一回、午前1時間半の源氏講座を12回行いました。6年目の講座でした。
今年度は、8人の女性の生涯を丹羽源氏(丹羽による源氏物語の要約)でたどりました。女性にとって難しい時代をしたたかに生きた方、男に翻弄された方、男を翻弄した方。そんな方々の登場場面をできるだけ詳細に描きました。頭中将の忘れ形見「玉鬘」の紹介には三回を当てました。朧月夜、六条御息所、藤典侍、弘徽殿女御、秋好中宮、明石の中宮、そして源氏の妻、紫の上も二回にわたって語りました。光源氏の陰に隠れがちな女性たちに焦点を絞った一年でした。丹羽源氏のキイワードはもちろん3K(好色・皇統・後見)です。3K視点から人物の言動を考え、系図から人物を読み解くのは当初からの一貫した方針です。
活動を行う上での指導の工夫やポイントがあればお聞かせください。
A3サイズの150名の登場人物の系図は事前にお配りしてあります。今回は、大河ドラマ「光る君へ」が放映されていたこともあり、藤原氏(摂関家)と天皇家の結びつき、摂関政治の概要、源氏物語への反映を示す資料も用意しました。
怨霊となった六条御息所は「帖35若菜下」では仏の加護を得て復讐しようにも近づけない源氏に悔しさを吐露します。「帖38鈴虫」では死後もなかなか悟れない母に娘(秋好中宮)も困惑気味です。
われは今 すんなり成仏
かかるさまなれ すべしと思ふ
なのに君 むずかし母の
のがれし祟り しご供養
けしからぬこと
主催団体や受講者からの反応はいかがでしたか?
勝手な男の振る舞い(光源氏も含めて)にはあくまでも物語であることを強調して語りました。一年間の講座のまとめとして、朧月夜と光源氏の危険な場面を二つの折句にしました。まだ「立派な色好み」になれていない時代の若気の至りです。この事件から源氏の人生は大きく転換していくのです。折句の冠は「けいずからよみとく」、沓は「げんじものがたり」となっています。
二人はまずいことに、逢引の場を朧月夜の父大臣に見つかってしまいます。
けさ(今朝)床ふたり いけないすがた スリルに萌えてか かよ(通)ひし愛の らく(落)雷の夜も よあ(夜明)け帰れじ み(見)に来たおとん とく(疾く)姉に告げ |
大臣の娘で朧月夜の姉である弘徽殿女御は、この一件を源氏追い落としの好機と考え一計を案じるのです。
けしからぬなり いもうとへ通った すき者やつか かねて恨みの らつわん姉も よもや逃がさじ みぞう(未曾有)じけん とぐや爪砥(と)げ |
大河ドラマ「光る君へ」では源氏物語のエピソードがドラマの随所に盛り込まれていました。摂関政治を陰からだけでなく実際に動かしていたのは女君たちだったのかもしれません。受講者の方も録画したりして熱心にご覧になっていたようです。
皆さん人生経験豊かな方々です。静かに、自身の人生を重ねて私の語る女君の運命を聞いて下さっていたように思います。実際はどう思われているのか、怖くて聞けない部分もあるのですが。ただ、多くの人物が登場し、関係が複雑なので「源氏は迷路を歩いているようだ。」とおっしゃった方がいらして、系図が有効だったようです。私の講座が、源氏物語を見る新たな視点を提供できたのならば望外の幸せです。
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