団体受検 取組事例(小・中・高 等)
小学校
学校を会場に保護者や住民も受検する漢検は、子どもはもちろん地域全体の成長を促す取り組みです/小学校/福岡
九州・沖縄 / 福岡
[公立] 新宮町立立花小学校
校長 安部 章 先生
本校が目指す学校像
本校は明治6年に開校した歴史と伝統のある学校です。そのため、保護者や地域の方々の中には卒業生も多く、「自分たちの学校」という意識を持ってくださっており、日頃から地域とのつながりが強い土地柄です。また糟屋郡新宮町の小中学校では、数年前からコミュニティ・スクール(以下、CS)へ順次移行が進み、現在ではすべての学校でCSの仕組みを導入しています。
これらの特色を生かし、本校はCS立花小学校として子どもたちと保護者と地域のみなさんが共に学び合う「みんなの学舎(まなびや)」を目指しています。世代を超えて学び合う機会を作ることで、地域全体の成長につなげたいと考えています。子どもは大人が学ぶ姿を間近に見ると刺激を受けるものです。そのような経験を糧に今の子どもたちが大きくなった時、地域に根差し、その想いを受け継ぎ続ける存在になってくれることを期待しています。
教育方針と漢検導入のきっかけ
これからの社会において、子どもたちには「たくましく生きる」ことがより一層求められます。そこで大事なのは何事にも粘り強く取り組むこと、そして学び続ける力です。
本校では、福岡県教育委員会が展開する「鍛ほめ福岡メソッド」をもとにした「鍛ほめCS立花小メソッド」を実践しています。例えば、本校は立花山の中腹にあり、広い校区の中でも一番標高の高い場所に位置していますが、徒歩での登下校を奨励しています。子どもたちには負荷がかかりますが、保護者の理解はもちろん、近隣の方々も通学路で毎日励ましてくださっています。また学習面でも、練習問題の丸つけや読み聞かせにご協力いただくなど、地域全体で子どもたちの成長を支えてくださっています。
地域の協力を得た活動が定着してきている一方、CS立花小学校として目指す「みんなの学舎(まなびや)」という点で、保護者や地域のみなさんも一緒に学ぶことができる取り組みを思案していました。そこで、学校を会場として子どもも大人も共に受検できる漢検を導入することにより、「みんなの学舎(まなびや)」の一歩を踏み出すことができました。
漢検導入のメリット
1.世代を問わず学び合う機会を具現化できる
漢字は年齢に関係なく学べる身近な学習対象です。尚且つ一生使うものですから、漢検は他の検定試験と比べて、どの世代にとっても取り組む意義があると思います。また、ただ単に漢字の読み書きだけでなく筆順や音訓、熟語の構成など、漢字に関する幅広い内容が出題されることも漢検の特長のひとつです。大人は普段使っているとあまり意識しないことが多いですが、子どもは学校で毎日学習しています。そのため、逆に子どもが大人に教える場面も見られます。良い意味でお互いに教え合うことができるのです。
本校を会場に初めて漢検を実施した際、親子三世代(児童とその父親と祖父)で受検を申し込んだ家族がいました。あいにく検定当日に児童がインフルエンザで欠席してしまったのですが、「次は必ず全員で合格する!」と意欲に燃える姿が印象的でした。話を聞くと、家族で団欒する時にも「どれくらい勉強しよるか?」「おじいちゃん負けんよ!」「僕だって!」という会話で盛り上がったり、一緒に学習に励んだりしたそうです。学校がきっかけを作ることで、それが家庭にもいい影響を及ぼす素敵なエピソードだと感じています。
2.「鍛ほめCS立花小メソッド」との親和性が高い
漢検は前述の「鍛ほめ福岡メソッド」および「鍛ほめCS立花小メソッド」の考え方とも合致しています。具体的には、「鍛えて、ほめて、子どもの可能性を伸ばす!」というコンセプトのもと、高めたい子どもたちの資質として【学ぶ意欲】【規範意識】【自尊感情】【体力・忍耐力】等が示されており、ポイントを端的に整理すると以下のように言うことができます。
【学ぶ意欲】…目標や計画を立て、自ら学ぶ姿勢を身に付ける。
【規範意識】…明確なルールに則って正々堂々と取り組む。
【自尊感情】…「自分はやれるんだ」という気持ちや達成感を味わう。
【体力・忍耐力】…困難なことに対しても粘り強くやり遂げる。
まず「鍛える」という点では、漢検は自分自身の実力に合った受検級を自由に設定することができます。そして合格という目標に向けて一生懸命勉強し、それを教員はじめ大人がサポートします。また、普段の漢字テストとは一味違った雰囲気の中で試験に臨むことも子どもたちにとっては貴重な経験になります。そして「ほめる」という点では、受検後に協会から検定結果資料や合格証書が届き、自らの頑張りを確かめたり認めたりすることができます。この一連のプロセスが子どもたちの成長にプラスとなり、上記の資質を養うことができます。まさに漢検がその役割を担っているのです。
漢検の実施や運営方法
本校では希望者を対象に漢検を実施しています。募集に関しては、学校以外に地域の公民館に受検案内を設置しています(※画像参照)。一人でも多くの地域の方々に参加してもらい、子どもたちと一緒に学んでほしいという思いから、積極的に働きかけるよう心掛けています。検定当日の運営や試験監督は教員が担当します。なお、子どもたちだけでなく保護者や地域の受検希望の方に対して、協会からいただいた漢字学習プリントや問題見本をお渡ししています。これらを活用することで、出題の傾向を事前に把握しておいていただけるよう配慮しています。
今後の展望
新宮町では社会教育の一環として、各校区で地域寺子屋を開校しています。これは公民館等を使って地域の方々が子どもの学びの場を提供する取り組みです。この地域寺子屋と学校の両方で漢検を受けられる仕組みを作りたいと考えています。例えば、夏休みは町内の公民館、年度末は学校で実施するイメージです。これなら、地域の身近な施設を会場に何度でも受けられるという漢検のメリットを最大限に活用することができます。
また、新宮町に隣接する久山町では町予算で町内小学校4~6年生全員の検定料を助成しています。新宮町でもこのような支援制度を整備していただけるよう、要望していこうと考えています。そうすることで、「みんなの学舎(なまびや)」がCS立花小学校から新宮町全体へと広がっていき、「老若男女が学び続ける町~新宮町~」となることを夢見ています。
※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。