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団体受検 取組事例(小・中・高 等)

小学校

地域と学校が連携・協働し、 「生きる力」と「もやいの心」を持つ子どもを育てる ~コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進で教育ビジョン実現へ~/小学校/岡山

会長 笠原 宏之 様(写真:左)委員 中濵 文子 様(写真:中央)委員 中濱 稔文 様(写真:右)

中国・四国 / 岡山

[公立] よりしま魅力化推進協議会(寄島学園学校運営協議会)・よりしま地域学校協働本部

会長 笠原 宏之 様(写真:左)

委員 中濵 文子 様(写真:中央)

委員 中濱 稔文 様(写真:右)


※令和4年度「コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進」に係る文部科学大臣表彰団体
※「よりしま魅力化推進協議会」は、浅口市立寄島中学校・浅口市立寄島小学校・浅口市立寄島こども園・
 浅口市立竜南保育園合同の学校運営協議会の呼称

■学校・地域・家庭の教育力を結集し、未来を担う子どもたちの豊かな学びと育ちを創造

 よりしま魅力化推進協議会(以下、本協議会)は、学校園運営への積極的な参画・連携強化を進めることにより、共に未来を担う子どもたちの豊かな学びと育ちの創造を目指しています。そのためには、学校園(教職員)と保護者・地域住民との双方向の信頼関係を深めたり、地域・家庭・学校園がその教育力を相互に高めたりすることが重要です。その手段として「コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進」を図っています。
 浅口市の教育目標は「郷土あさくちを愛し、心豊かにたくましく、未来を拓く人づくり」としています。本協議会ではその目標と寄島地域の特色などをもとに熟議を重ね、「育てよう!生きる力ともやいの心をもつ子ども」をCS共育目標として定めました。「育てよう!」というフレーズは、地域・家庭・学校園が当事者として一緒にやろうといった「Let’s」の姿勢を表現しています。「もやい」とは、船をつなぎとめる綱の結び方のことを意味します。船が海や港で錨を下ろして停泊する時、波や潮で流されないよう船同士を綱でつなぎ、支え合います。つまり、「もやいの心」は「支え合い・助け合いの心」という意味になります。寄島地域は瀬戸内海に面しており、古くから漁業が盛んであることから、「もやい」という言葉を使用しました。
 本協議会は、小・中学校の校長とPTA役員、保育園・こども園の園長、大学教授、地域諸団体の会長、一般社団法人の代表理事、主任児童委員、地域支援員など総勢16名で構成しています。その中から、学校園と地域の連携・協働を円滑にし、学校園や地域の課題解決を推進する「魅力化コーディネーター」(地域コーディネーター)を4名選任し、よりしま地域学校協働本部(地域住民・団体等の緩やかなネットワーク)による活動の中核を担ってもらっています。そして、本協議会の下部組織という位置づけで、保育園・こども園・小・中学校教職員代表、PTA代表、地域代表で構成する3つの部会を設けています。
 そして、本協議会・よりしま地域学校協働本部・3つの部会をつなぐ中心的な役割を担っているのが、「CS企画・本部ミーティング」です。「魅力化コーディネーター」4名、学校園長、学校園事務局で構成しており、全体方針や計画の策定、企画調整などを行っています。このミーティングで決まった事項を受けて、部会ごとに下記のテーマをもとに熟議し、具体的な行動や計画を本協議会へ企画提案しています。

  • 学びづくり部会
    学力向上や学習習慣の定着、朝学習・放課後学習の充実、家庭学習習慣の確立など
  • 心と体づくり部会
    子どもの基本的生活習慣の定着や体力づくり、落ち着いた学習環境の構築など
  • 絆づくり部会
    児童・生徒の居場所と出番づくりの実現を目指した地域との連携・協働による教育活動や学校支援ボランティアの充実、「よりしま学」の開発と発展など

(図1)組織体制図 


 
組織体制図

(図2)組織関係図と分掌 


 
組織関係図と分掌

(図3)よりしま学 カリキュラムシート 


 
よりしま学 カリキュラムシート

■子どもたちの読解力を育むための1つの手段として「漢検」を活用

 本協議会の小学校部会において、地域連携担当教職員から、「全国学力・学習状況調査などの結果から、寄島の子どもたちは、読解力に課題があるようだ。学校でもさまざまな手立てを講じているが、もう一歩進めた手立てを講じたいと考えている。どんな手立てが考えられるか、ご意見をいただきたい」との議題が出されました。小学校部会には、元高校国語教諭だった委員がおり、その委員から「読解力向上には、やっぱり読書」という声が上がりました。そこで、週1回の朝読書を週2回行うことにし、さらに職員室にいる教職員も含め、校内すべての大人も朝読書に集中するよう取り組みました。まずはできることからということで朝読書の回数を増やしてみたものの、それだけでは課題解決に向けて物足りないのではという感覚がありました。
 ある日の「CS企画・本部ミーティング」において、当時の校長先生から、「読解力を高める取り組みをさらに推進する1つの手段として、漢検を地域と学校が連携・協働した形で取り組んでみるのはどうか」と提案がありました。漢字の熟語を正しく読んだり、意味を理解したりする力が身についていなければ、読書を重ねても読解力が高まらないのではないかという考えからでした。この提案を受け、そのような力は読書だけでなく、教科書の内容やテストの問題などを正しく読んだり、理解したりするためにも重要であるという認識を参加者で共有しました。そして、本協議会に具体的な取り組みを諮問し、熟議を経て、承認されました。
 

■「漢検」に向けた取り組み

 漢検は学校を通じて希望者を募り、年2回(夏休み中・冬休み明け)実施しています。小・中学校の子どもたちだけでなく、保育園やこども園の年長組の保護者の方々にも案内文書を出し、募集をしています。実施初年度には予想を超える70名ほどの子どもたちと保護者がチャレンジしました。親子や兄弟で挑戦するケースも見られ、家庭の関心の高さを実感しました。家族で一緒に受検し、合格すると、漢検協会から「合格証書」に加えて、「家族合格表彰状」(要申請)がもらえます。家族で学びと喜びを共有する体験はさらなる励みになり、家庭学習習慣の確立につながることを期待しています。
 また、検定を実施するだけでなく、学習支援活動として位置づけている「よりしま寺子屋」や「夏ガクサプリ」(※)を活用し、漢検に向けた学習会も開催しています。「漢検合格」という目標に向かって、真剣に勉強する子どもたちの姿が見られ、自分が決めた目標を粘り強くやり抜きたいという意志も感じ取ることができています。個別最適な学習目標を選択し、挑戦できる検定試験の仕組みが、子どもたちによい影響をもたらしているのではないかと考えています。
 今後は、地域住民の方々にも呼びかけを行い、寄島地域全体で学ぶ楽しさを共有する雰囲気を醸成していきたいです。

 ※夏休み中、子どもたちに多様な学習機会の場を地域と学校が協力して提供する取り組み。
 

■CS共育目標を目指し、「コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進」

 寄島の子どもたちの生きる力と、もやいの心を育てるためには、地域・学校・家庭の持続可能な連携・協働が不可欠です。それを支える仕組みが「コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進」であると考えています。子どもたちの教育を学校に任せっきりにするのではなく、地域・学校・家庭がビジョンや課題を共有し、それぞれの役割を主体的に果たすことで、未来を担う子どもたちの豊かな学びと育ちを創造していきます。
 

○浅口市立寄島小学校 校長 田中 圭子 先生のコメント

 地域と学校が連携・協働し、子どもたちが漢検にチャレンジする機会をつくることで、さらに挑戦したいという気持ちを持っている子どもたちを後押しすることができました。
 検定試験当日の朝、開始時刻まで、子どもたちは図書室で待機していました。中学生は問題集を開いて勉強し、小学生は図書室の本を読んでいました。試験ギリギリまで勉強する中学生の姿に感化され、小学生も問題集を開き、勉強をはじめました。身近なお兄ちゃんやお姉ちゃんが学ぶ姿が、子どもたちの動機づけにもつながっていると感じた光景でした。
 私も子どもたちと時間を共有したくなり、2回目となる冬に一緒に受検しました。子どもたちにとっては、先生が試験を受けている姿は新鮮だったのではないでしょうか。また、実際にやってみせることで、子どもたちの学びへの動機づけが図れたのではないかと考えています。余談ですが、検定試験を終えて、帰宅すると、子どもが「お母さん、がんばったね」と言ってくれて、嬉しい気持ちになりました。私が家でコツコツ勉強する様子を見てくれていたようです。
 子どもでも大人でも誰かに挑戦や努力を認めてもらえたり、褒めてもらえたりすると幸福感や充実感が得られます。このような経験を子どもたちにできるだけ多くしてもらえるように、さらに環境を整えていきたいです。
 本取組を持続可能なものにしていくために、教職員が担う役割と、地域や保護者の方々が担う役割を整理・明確化したうえで、よりよい連携・協働を図っていきたいと考えています。
 

○浅口市立寄島小学校 前校長 (現 文部科学省CSマイスター、高梁市教育委員会社会教育課参事)安田 隆人 先生のコメント

 本取組のきっかけは、本校の学力向上担当教員が全国学力・学習状況調査の分析結果から課題(読解力育成)を抽出し、本協議会においてその課題と学校で取り組むべきことを共有・提案したことからでした。それを受け、本協議会や「CS企画・本部ミーティング」で協議と熟議を重ね、最終的に漢検の実施につながりました。このような意思決定および実行プロセスが、「コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進」において肝要であると考えています。
 また、本取組は学校主体で実施するのではなく、学習をテーマとした地域学校協働活動、生涯学習を推進する活動として、「魅力化コーディネーター」(地域コーディネーター)が核となり、学校を会場に地域主体で実施しています。まさに、社会教育と学校教育が連携・協働し、相互に作用している1つの事例と言えます。
 現職の高梁市では、地域学校協働活動推進連絡会議や公民館連絡会議で、本協議会での取組や漢検を活用するメリットなどを説明しました。高梁市では各校区にある公民館に地域学校協働本部を設置していることから、いくつかの公民館の館長が学校運営協議会で提案し、取組がスタートしています。公民館が中心となり、漢検に向けた学習会の企画・運営と検定試験の実施を行い、子どもからシニアまで参加しています。こうした取り組みは、国語や日本語への興味関心を高め、地域における学びの場の定着と、生涯学習の推進につながっています。
 ある公民館では、6歳児から70歳の方が学習会や検定試験に参加しました。親子や兄弟、祖母と孫で一緒に参加する家庭や、自己研鑽のために地区外から参加する方などさまざまでした。学びによる多世代交流が生み出され、ほのぼのとした温かい雰囲気で、新たな顔の見える関係づくりにもつながっています。ある住民の方は「漢字検定に取り組んでいただき、ほんとにありがたい。もっと広がればいいのに!」と、公民館長に話されていました。
 漢検の活用は、「児童生徒の学力向上」だけでなく、「目標設定(昇級)による学びのモチベーション向上」「家族での学びの機会提供による家庭教育支援の促進」「社会人の学び直し」「読み・書きを通じた脳トレによる脳の活性化」「資格取得による入試や就活でのプラス評価」などたくさんのメリットがあります。
 今後、本取組の成果が他の地域や人々にも広がり、多世代交流型の学びをきっかけに、より多くの方のウェルビーイングを高め、人生100年時代に生涯にわたって学び続ける学習者を育むことにつながることを期待します。
 

 取り組みの様子 



取り組みの様子1
取り組みの様子2

取り組みの様子3
取り組みの様子4

取り組みの様子5

中国新聞の記事はこちら(中国新聞社提供)
https://www.kanken.or.jp/kanken/groupcase/data/yorishima_mext_award_chugokushinbun.pdf

山陽新聞の記事はこちら(山陽新聞社提供)
https://www.kanken.or.jp/kanken/groupcase/data/yorishima_mext_award_sanyoshinbun.pdf


※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。

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