団体受検 取組事例(小・中・高 等)
中学校
中学時代に豊かな言葉の力を養うため「漢検」を活用/中学校/沖縄
九州・沖縄 / 沖縄
[私立] 興南中学校
国語科 東迎 あゆみ 先生 | 平良 先子 先生 (写真左から)
1.論説文が弱い理由は、「語彙力」不足にあった
本校は中高一貫教育をおこなっており、中学では基礎学力と学習姿勢の定着を目指して教育をおこなっています。「漢検」は10年以上前から導入しており、導入当初は進学や就職時に有利に働く「資格」として生徒に勧めていました。
ところが、数年前に進路指導のために国語の模擬テストを分析した結果、本校の生徒は他県と比べて論説文が弱いことがわかりました。理由を探るため生徒の解答を詳しく調べたところ、文章の構造や要旨をつかめていないのではなく、そもそも文章や設問に出てくる語彙の意味が理解できずに問題が解けていないことが判明したのです。そこで、生徒たちの語彙力を向上させることが国語科の大きな課題となりました。
2.語彙力向上への取り組みとして「漢検」を活用
語彙力向上への取り組みとして、中学3年生の授業では高校で取り扱うような「文化論」や「自然科学」をテーマとした少し難しい文章を読ませています。文中の語句がわからないときは常に紙の辞書で引くよう指導しています。最初は辞書を引くのに苦労する生徒も多いのですが、毎回の授業でおこなうと次第に慣れてくるようです。夏休み前に外山滋比古氏の『思考の整理学』の一部を扱った際には、生徒から「もっと読んでみたい」と声が上がったほどです。
さらに、入試の「論説文」や「小説」などに頻出する漢字や語句をピックアップし、プリントにして生徒に出題するようにしています。ただ、生徒は漢字や語句を覚える、こつこつドリルに取り組むということはあまり好きではありません。そこで、活用できるのが「漢検」です。級を取得できる、合格証書がもらえるということは生徒の励みになるので、中学の3年間で毎年2回ずつ「漢検」を受検することを目標に学習を進めています。無理なく取り組めるように中学1年で6級からスタートし、順に級を上げていきます。対外的には中学3年生までに3級を目標に掲げていますが、生徒たちには「準2級、2級を目指そうね」と声をかけています。中学全員で「漢検」に取り組むことは、生徒の「合格したい」という意欲も刺激しているようで、互いに切磋琢磨して合格を目指しています。希望者受検だとなかなか自ら受検しないような子も、みんなでやるとなると積極的に参加しやすくなるようです。基本的には「漢検」も語彙力向上の取り組みの一環なので、「漢検」対策のための授業はあまりおこなっていません。2、3年生になると毎日自分で選んだ課題を学習して提出する「自学ノート」で自主的に漢字を学習する生徒もいます。また、検定直前には過去問題を見せて、「部首」や「対義語・類義語」など生徒たちが普段解き慣れていない分野の問題に取り組ませています。
こうした取り組みの結果は、次第に生徒の模擬試験での「論説文」の結果に現れてきました。語彙を増やす取り組みが確実に読解力の向上につながっていると感じています。
3.中学時代に触れた言葉が、将来にわたって使える言葉の力を決める
近年、本を読む機会が減り、日常触れるメディアで使われる言葉も噛み砕いた表現が増えているため、生徒たちは知らない言葉に触れる機会が減っているようです。そのためか、知らない言葉に出会ったときの生徒の反応が「へぇ、知らなかった!」「はじめて知った!」という驚きや喜びから、「そんな言葉は知らない。使わないから覚えなくていい」という否定的な反応に変わってきたように感じます。
漢字力・語彙力は国語力になり、国語力はすべての学力に通じます。どれだけ教員の思考についてこられるかによって、授業の理解度も変わります。さらに、中学時代にどのような文章に触れ、言葉を体得できるかによって、将来にわたってどれだけの語彙を自分の言葉として操ることができるかが決まってくるのです。生きる世界によっても使う言葉は違ってきます。「将来、どんな言葉を使う人になりたいのか。」生徒たちが自分の将来を考えるためにも、学校生活の中でできるだけ多くの言葉や世界に触れるきっかけを作り、生徒たちの生きる力の基盤を築いてあげたいと思います。
●平成21年度 特別賞 受賞●
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