漢字学習で「学びの原点回帰」へ／中学校／東京

伝統から未来へ

　都立白鴎高校は1888年に創立されてから今年で122年目を迎える、都立高校では3番目に古い歴史を持った学校です。教育理念である『開拓精神』を受け継ぎ、各界でリーダーとして活躍する先輩たちを多く輩出してきました。また、平成17年には附属中学校を設置し、東京都で最初の公立中高一貫教育校として新たなスタートを切りました。
　本校では、日本の伝統文化理解に力を入れた教育を行っています。在校生の中には、歌舞伎で活躍する生徒やプロの囲碁・将棋の棋士として活躍している生徒もいます。日本の伝統文化を体験的に学びながら、高い知性と豊かな教養を備えた未来社会のリーダーとなる人物を育成しています。

特別枠募集

　本校では一般枠と特別枠の二つの入学者決定枠を設けています。特別枠では、囲碁・将棋、邦楽（三味線、箏、囃子）、邦舞（日本舞踊、歌舞伎、能・狂言）などの分野に継続して取り組み、上級の資格や卓越した能力のある生徒を募集しています。また、検定試験で卓越した成績を残した生徒も同様に評価し受け入れています。検定試験は設定されている級と各学年での学習内容が対応しており、各教科における生徒の能力を客観的に示す評価指票として適切だからです。
　日本漢字能力検定（以下、漢検）については2級以上を取得している生徒を評価の対象としています。漢検2級というのは安易な検定対策で取得できる級ではありません。きちんとした漢字の基礎を身に付けており、ある一定以上の国語力がなければ対応できないレベルの問題が出題されます。漢検2級は、しっかりとした漢字力に裏付けられた国語の力を身につけていることを証明する指標であるといえるでしょう。実際に漢検2級以上を取得している生徒を見ていると、コツコツと学ぶ姿勢や読書の習慣がしっかりと身についています。

"漢字を"学び、"漢字で"学ぶ

　本校では「学びの原点」を大事にしています。漢字の学習は、1.繰り返し書く、2.文脈や状況に適したものを選択する、3.応用して使う、というプロセスで行います。このプロセスは漢字学習特有のものではなく、すべての教科学習に共通するものです。このプロセスこそが古今東西を問わない「学びの原点」なのです。私たち日本人は幼少の頃より漢字学習を通じて、漢字そのものだけではなく、この「学びの原点」をも同時に学んできたのです。いわば"漢字を"学びながら"漢字で"学んできたと言えるでしょう。この漢字学習の本来的な価値を忘れてしまえば、それはただの暗記作業にすぎません。
　今の生徒たちを取り巻く社会はたくさんのモノや情報が溢れており、10年前と比較しても欲しいものが簡単に手に入るようになっています。生徒たちはややもすると安易に手に入れた情報や知識で満足してしまいがちです。しかしながら、そのようにして手に入れた情報や知識というのは、時間がたてば忘れてしまうもので決して自身の糧になるものではありません。こんな時代だからこそ生徒たちには「学びの原点」そのものを、しっかりと受け継いでほしいと考えています。

漢検の取組み

　本校では、年に一度必ず中学生全員に漢検を受検させています。検定合格に向けて特別の対策を行っているわけではありませんが、生徒たちの漢字学習の成果を測定する機会として、年2～3回は学校を会場とした団体受検（準会場受検）を行っています。高校進学までに準2級以上の取得を目標として指導をしています。
　生徒たちにとって漢検はとても良い「刺激」になっていると思います。校内で行う小テストとは違って、社会的に流通性の高い検定試験で自分の能力を試すことが、日頃の漢字学習の強い動機付けになっているようです。また、明確な目標が設定されるので、目標到達までの継続的な学習へとつながっています。
　生徒と一緒になって漢検を受検している教員もいます。漢検に取り組んで6年目を迎え、学校のイベントとしてすっかり定着しています。

※掲載内容（所属団体、役職名等）は取材時のものです。

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