団体受検 取組事例(小・中・高 等)
中学校
長野の伝統「白文帳」学習の力試しとして/中学校/長野
北信越 / 長野
[公立] 長野市立三陽中学校
奥野 としみ 先生
長野に受け継がれた伝統の強み
長野県の公立小中学校には、長年受け継がれた「白文帳」の伝統があります。「白文帳」は全ての児童生徒に与えられ、毎日1ページ(150字)以上ずつの漢字練習を行うことが習慣になっています。「白文帳」自体は単純にマス目が並んだだけの、どこにでもある平凡なノートであり、誰でもすぐに作れるようなものです。ですが、「毎日1ページ以上練習するのが当たり前」という目に見えない受け継がれた伝統文化こそが、誰にも真似することのできない本当の意味での価値なのだと思っています。
本校では、この「白文帳」を使って毎日コツコツ積み重ねてきた漢字の力を試す機会として、漢字検定を実施しています。もちろん、定期テストなど範囲にも漢字は含まれるのですが、どうしても一部の読み書き問題に限定されてしまいます。一方、漢字検定は部首、誤字訂正、対義語・類義語など、漢字活用力全般に渡る出題がされますので、漢字の総合力・応用力を測定することができます。また、全国統一の指標で測定され、合否が目に見える形で残りますので、まさに「他流試合」として腕試しするのに最適な仕組みだと考えています。
本校の教育方針のひとつとして、「確かな学力の定着と保障」が謳われています。その項目のひとつに、「漢字検定や英語検定を実施して、目的をもった学びを行います」とあります。3年生までに3級の合格を目標として、生徒たちに積極的な受検を推奨しています。
指導方法と検定結果
「白文帳」を使って、1年生では小学校時代の復習として10級レベルの漢字から練習を開始し、2年生の1学期前半までに4級レベルの漢字まで練習をさせます。しかし、2年生でも3級まで合格できる生徒も少なくありません。そこで、全体のレベルを見極めて受検希望者の級も合わせて練習させることにしています。2年生の1学期後半からはまた10級に戻って再度繰り返しますので、3年間で10級から4級までの漢字を2回練習することになります。
「白文帳」の使い方にも工夫を行っています。単純なマス目が並んでいるだけですので、使い方の工夫は無数にあります。本校では、漢字検定に出題される内容を見据えて、部首は赤ペンで書くなどの使用法も指導しています。
これらの指導の成果か、平成22年度は3級以上の合格者数が全校生徒の15%以上に到達しました。分母には1~2年生も含まれますから、決して低い数値ではないと自負しています。
印象に残った生徒たち
ある男子生徒は、2年生のうちにどうしても2級に合格したいという意志が強く、通常1日1ページのところを4~5ページも練習していました。2年生の第3回(冬)検定で2級に挑戦した彼は、親の仕事の都合で、残念ながらその結果を見ることなく転校して行ってしまいました。その後、見事合格の通知が学校に届き、転校先まで転送しました。彼の喜ぶ顔を直接見られなかったことが、少しだけ心残りでいます。
周りのお友達が次々と合格する中、なかなか合格を勝ち取れない、漢字が苦手な女子生徒がいました。焦りや諦めの感情が出てきた彼女に対し、保護者と一緒に「自分のペースでゆっくりと積み上げていけばいいんだよ」とアドバイスをしました。また、続けて不合格だった時も、「前回より点数が上がっているね。合格までもう一歩だね。」と激励を続けました。結果としては目標の3級までは至らなかったのですが、彼女は最後まで挑戦を止めないことの大切さを学んでくれたと感じています。
学校紹介
校長:野口 考一 生徒数:639名
校名の「三陽」の「三」は、創設当時の先輩たちは、この三陽の「三」に教育的な意味を持たせ、「真」・「善」・「美」につながる三であり、「知」・「情」・「意」につながる三であるとし、また、「三陽」の「陽」は、光であり、希望であり、理想であるとして、三陽教育の根幹的な願いをここにかけて、誠意、研鑽努力を重ねてきています。
※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。