文脈の中で漢字を学ぶために／中学校／広島

1．「建学の精神」と特色教育

　広島女学院は、1886（明治19）年に創立されました。「自分を愛するように、まわりの人を愛しなさい」というキリスト教の精神を建学の理念とし、創立当初から「単に知識だけを高めるのではなく、豊かな人間性をあわせもって、周囲の人々、社会に貢献できる女性の育成」を目指しています。このような人材の育成にあたり、本校では「宗教教育」「平和教育」「国際教育」といった特色教育に力を入れています。
　特色教育の具体的な実践例として、「碑めぐりボランティア活動」が挙げられます。これは広島市を訪れる県外の生徒に対し、平和公園内の碑を案内して平和学習の手助けをする活動です。ボランティアへの参加を希望する生徒は多く、募集すると翌日には定員枠が埋まってしまうという盛況ぶりです。この活動を通して、生徒にとって自発的に平和について考える貴重な機会になっているようですし、他者にものを伝えることの難しさや楽しさを経験しているようです。

2．国語科の教育方針

　上記の特色教育や各教科教育の土台となる力は国語力です。その中で基礎となるのは語彙・漢字力です。国語科ではこれらの力を養うことが大きな責務であると考え、中学の段階において以下3点の取り組みに注力しています。

（1）漢字小テストの実施
　国語科では、語彙・漢字力を身につけさせるための手段のひとつとして、週1回漢字小テストを実施しています。その方法は人によって様々ですが、口頭で文章を読み、該当箇所の漢字の書き取りをさせる教員もいます。私もその方法を実践しています。
　具体的には、まず市販の問題集を学習させ、テストの際に空欄の用紙を配ります。その後、問題集のテスト範囲の中にある出題文を１問につき2回音読し、漢字を書き取らせます。合格点は20点中15点以上とし、14点以下の生徒は間違えた漢字だけでなく、文章の形で4回ずつ復習させるという方法です。通常の漢字学習においては、生徒は解答部分の漢字のみを丸暗記しがちですので、この方法は文脈の中で漢字を覚えさせるのに効果的です。なぜなら、音読して生徒に書き取らせることによって、出題文全体を見て漢字を覚えるようになるからです。

（2）漢検の取り組み
　上記の漢字小テストの取り組みは以前から継続して行ってきましたが、漢字学習への動機づけが課題でした。動機づけのためにはどのような方法で漢字を学ばせていけばよいかを考えた結果、新たに漢検を活用することしました。漢検は、ステップアップするための明確な目標設定ができ、学習結果が目に見える形で客観的にわかるからです。そこで本校では、中学3年生で漢検2級合格を目指すために、1年生で4級、2年生で3級と準2級取得を目標に掲げ、毎年6月と1月に受検機会を設けて生徒全員が受検します。
　漢検に向けた学習については、夏休みなど長期休暇期間には漢字の課題を意識的に出すようにしています。基本的に毎週の漢字小テストを通して常用漢字の読み書きを学習させているので、この日々の積み重ねが漢検対策につながると考えています。

（3）多岐にわたる分野の読書を推奨
　漢字小テストや漢検で語彙・漢字力の向上を目指す一方、日常生活の中で漢字を活用する機会を設ける一環として、読書活動にも力を入れています。特に近年の生徒の様子を見ていると、以前と比べて読書量がかなり減少しているようです。その理由は、日常生活の中に読書が位置づいていないからだと思います。そこで、読書をすべきものとして生徒に押し付けるのではなく、面白いものとして身近に感じてもらえるような工夫をしています。
　たとえば、そのひとつに読み終えた本の紹介文を書く「ポップ作り」が挙げられます。この取り組みは、各自が好きな本を読み、その内容をインパクトのあるポップ形式で表現することによって、他人に本の魅力を伝えるために実施しています。作成したポップは廊下に展示し、常に生徒の目に触れる状態にしていますので、ポップを見て本を読むきっかけにもなっています。今後とも、上記の取り組みを継続し、文脈の中で漢字に出会う場を創っていきたいと思います。

写真：本の紹介文

※掲載内容（所属団体、役職名等）は取材時のものです。

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