団体受検 取組事例(小・中・高 等)
高校
進路が多様化する時代だからこそ身につけてほしい熟語力・漢語力/高校/大分
九州・沖縄 / 大分
[私立] 学校法人岩尾昭和学園 昭和学園高等学校
波多江 裕一 先生
1.学校の特色
■水郷日田の伝統校
本校は広瀬淡窓の咸宜園で有名な水郷日田の地に創設された、76年の歴史を有する伝統校です。現在、6つの学科・コースにおいて、創立以来の宗教的情操教育を原点に心の教育を実践し、三綱領「努力精進、明朗融和、感謝奉仕」を基本とした、時代にふさわしい人材の育成に取り組んでおります。また、2016年3月に新校舎が完成し、新たな時代に向けて大きな変革を遂げようとしています。
■SPH(スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール※)に指定
平成27年度に本校看護学科が私学で初めてSPHに指定されました。地域唯一の看護師養成校として、看護師国家試験の合格だけでなく、社会人基礎力を備えた人材の安定的な輩出を期待されています。
※SPH(スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール)とは
文部科学省が、社会の第一線で活躍できる専門的職業人を育成するため、先進的な卓越した取組を行う専門高校を指定して研究開発を行う「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)」事業のことで、平成26年度から実施されている。
2.漢検の取り組み
(1)明確な目標設定
漢検を実施する目的や取り組み方は各学科・コースで違うため、目標級もそれぞれ設定しています。
学科・コース |
目標級 |
普通科 特別進学コース |
2級 |
普通科 キャリアデザインコース |
3級 |
普通科 製菓衛生師コース |
3級 |
調理科 |
3級 |
福祉科 |
3級 |
看護学科 |
3級 |
この目標級は学校要覧や入学の手引きにも明記しており、在校生だけでなく入学前の生徒にもしっかりと意識していただけるよう心がけています。
(2)漢字学習の重要性
■大学受験のため
国公立大学や有名私大合格を目指す特進コースにおいて、受験対策としても漢検の学習は効果的であると考えています。現代文は勿論のこと、漢文の読解においても漢検で試される熟語の知識がものを言います。「対義語・類義語」の語彙が豊富でなければ評論文を分析的に読む力がつきませんし、漢文の対句の概念が理解できません。「熟語の構成」の正確な理解は漢文訓読に不可欠なものです。まして『況んや「四字熟語」の知識をや』です。また、近代小説を読むためには出題頻度が低く、且つ、高度な漢語の知識が求められます。漢検は決して単なる漢字の書き取りテストではありません。大学受験を目指す高校生に漢検を受検させる意義は大変大きいと思います。例年センター試験に出題される漢字問題には準2級レベルのものまで含まれています。以上のことから大学進学を目指す生徒は2級以上の合格が目標です。
■国家試験全員合格のために
看護学科、福祉科、製菓衛生師コースは、クラス全員の国家試験合格を目指しており、本校ではここ数年ほぼ100%の合格率を達成しています。合格のための基礎学力養成の一助として漢検受検は不可欠であると考えています。生徒たちは3級以上合格という明確な目標を掲げて日夜勉強に励んでいます。また、キャリアデザインコースや調理科においても進学する生徒は勿論のこと、卒業後就職をする生徒にも履歴書に書ける資格として漢検3級以上合格を目標とさせています。
(3)漢検合格に導くための工夫
■国語科とクラス担任との連携
本校では、クラスを挙げての受検を推奨しており、国語科と各クラスの担任が連携しています。国語科が準備した対策用の教材を、担任から生徒に配布し、提出させてチェックするという態勢をとっています。
■個人の能力に合わせる
診断テストとしてのプレテストを行い、個人成績票(資料①)を配付。自分の苦手分野を認識させます。各自に適切な受検級を選択させ、段階を追った指導を実施しています。
■徹底した対策
検定日のおよそ1か月前から、合格に向けての対策指導を開始しています。過去問を徹底して解かせ、さらに分野別プリントで個別に弱点補強を行っています。
■分野別の指導
本校生徒の苦手分野である「熟語の構成」や配点の低い「部首」についても疎かにせず、国語の授業内で解説しています。
■時間の有効活用
生徒たちには、限られた時間を有効に使ってほしいと考えています。進路学習のための企業見学の日と検定日が重なり、帰校後にすぐ受検しなければならないという日がありました。その際は、類義語・対義語や部首をまとめた「漢検の栞」(資料②)を作成してバスの中で学習させました。
画像をクリックするとPDFでご覧いただけます。
3.漢検実施による効果
漢検合格に向けた学習に取り組み、生徒全体の熟語力が上がったことで、つまずきの少ないスムーズな授業が行えるようになったと感じています。また、漢検に合格することで身につけた自信と向上心は、大学受験や国家試験受験に向けての学習意欲にも繋がっています。
4.最後に
高校生にとって漢検の学習とは熟語力の錬成に尽きると考えています。私は常々「四字熟語を制するものは漢検を制す」と言っています。近年、外来語が増えたとはいえ、日本語の語彙の大半は漢字で書かれています。国語力の向上のためには、熟語ひいては漢語の力が必要です。明治初期の和製漢語を産み出した学力こそがこれからの変化の激しい時代を生き抜く力になると思います。
学校紹介
校長:山本 省悟 生徒数:631名
昭和14年校父岩尾昭太郎先生により報恩感謝の宗教的念願に基づいて日田家政女学校が創立された。昭和23年昭和女子高等学校となり、平成14年共生の時代にあわせ共学の昭和学園高等学校となる。創立以来の宗教的情操教育を原点に心の教育を実践し、三綱領「努力精進、明朗融和、感謝奉仕」を基本として生きる力を身につけた時代にふさわしい人材の育成を目指しています。
共学にあたり基本である「教育」に加え、共に育つ「共育」、競って育つ「競育」の三つの「きょういく」の調和のとれた学校作りを目標にしています。
画像1:75周年記念本館 画像2:新校舎SGホール
※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。