団体受検 取組事例(小・中・高 等)
高校
漢検の学習を通して、新しい語彙と出会う機会を提供/高校/京都
近畿 / 京都
[私立] 洛星中学・高等学校
西川 義人 先生
生徒の学力を対外的な視点で評価
本校では中学生全学年と高校2年生全員で漢検を実施しています。漢検を企画・採用した背景として、生徒の語彙力の低下を感じていたことがあげられます。実際に、漢字の小テストで赤点を取る生徒がでてきており、語彙力を向上させる施策を考える必要性を感じていました。
語彙力は言葉の意味そのものだけでなく、時にはその成り立ちや思想的背景をも押さえる必要があります。普段の授業や読書の中で身につけていくように指導していますが、漢字小テストも含めてカリキュラムを有機的につなげて学習を進めるためにも、漢検を導入しました。
実際は、完全満点主義である学校の指導方針と検定の合格ラインとの乖離や本校が設定する身につけるべき力と漢検の級のレベルに違いがあるなど、対外的なものを導入する不安要素はありましたが、担当者以外の外部の視点で生徒の学力の評価ができるというメリットが非常に大きかったと感じています。
合格に満足することなく必要な力を確実に身につける
漢検はあくまでも学校での学習の一つの通過点であり、合格すればそれで力が身についたという訳ではありません。つまり、合格が目的ではないということです。大切なことは必要な力を100%身につけることです。そのため、学校行事との兼ね合いもありますが、漢検の実施は年度末の冬ではなく、秋に行っています。結果を1月に渡し、これを一つの通過点として、漢字運用能力が定着するように、年度末まで学習を継続します。
生徒にとって、見たことのない語彙をいきなり習得することは困難なことです。本来は普段の授業や読書などを通じて語彙を知り、その語彙を使用してレポート、論文など多くの文章を書かせながら、語彙力を身につけさせています。しかし、今は読書量が減っていることから、新しい語彙そのものに触れる機会が減ってきています。漢検の学習をすることで新しい語彙を知るという機会の補完ができていると思います。
また、漢字にしっかりと向き合い、勉強することにより、合格という一つの成功体験を得られます。そうすることで、言語への興味や関心が以前よりも高まり、合格に満足することなく確実に力を身につけようとする姿勢につながると感じています。
生徒のモチベーションを高め、高い合格率を保ち続ける
漢検の対策にあたって、対策書籍として「漢検 分野別問題集」を採用しています。「漢検 分野別問題集」を採用した理由は2点あります。
1つ目は苦手分野を集中的に学習できるためです。本校の生徒は読み書きの分野は比較的得意ですが、部首や対義語・類義語に関する分野で点数を落としており、それが学習のモチベーションダウンにもつながっていました。苦手分野を集中して対策したいという背景から「漢検 分野別問題集」を採用しました。この「漢検 分野別問題集」については、検定前に2周できるように取り組ませています。
2つ目は理解を深めながら学習できるためです。書籍内に各分野に関するトピックスが盛り込まれているため、生徒が楽しみながら漢字学習に取り組むことができると感じました。
検定対策とモチベーションの醸成・維持
授業内の指導については各学年の担当者にもよりますが、5月頃から小テストを行っています。事前に生徒には次回の小テストの範囲を伝えたうえで8割を合格点として設定しており、合格点に満たない場合は、満たない点数分「おみやげプリント」という復習プリントを生徒に配布しています。ただの不合格者向けのプリントではなく、「おみやげプリント」という名称にしたことで、生徒が学習のモチベーションを失わず取り組めるきっかけになったと感じています。
また、本校は中高一貫校のため、中学生にとっては大学受験までの目標が遠すぎます。その中で、モチベーションを高く持ちながら学習できるようにするため、教員から「学年全員で漢検●級の合格通知をもらおう」と声かけを行い、漢字検定の受検を団体戦という意識を生徒に持たせるように心がけています。現在、漢検は生徒にとっても身近な目標となっており、漢検があるから勉強しようという声が、日常的に飛び交うようになっています。検定に落ちると恥ずかしいという意識が非常に強いためか、かなり真面目に取り組んでいるようです。そのモチベーションが高い合格率を絶えず保ち続ける一つの要因となっていると思います。
身につけた語彙を活用できるようになってほしい
語彙の定着についてはこれからの課題であると感じています。語彙は活用できるようにならないと維持ができません。忘れないように逆流防止の弁を設けることが必要だと思います。繰り返しますが、合格したからといって語彙が完全に身についたのでありません。その語彙を使って文章を作成できてこそ初めて定着したことになります。今後は、その課題に向けて新たな取り組みを考えていく必要があります。
※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。