学園全景

　トヨタ工業学園は、トヨタ自動車株式会社の総務／人事部門内に設置されている企業内訓練校です。設立以来、約１８０００人もの卒業生を輩出し（２０１４年３月現在）、国内はもとより広く海外においても第一線で活躍しています。

　本学園の歴史は古く、１９３７年創業のトヨタ自動車工業株式会社（現トヨタ自動車）の翌年に開校した豊田工科青年学校までさかのぼります。当初は社内選抜で生徒を募集していました。戦後、募集対象者を新規中学校卒業者に変更し、１９６７年からは科学技術学園高等学校（通信制課程機械科）と技能連携教育を開始しました。これにより、専門的な技術・技能や資格を身につけながら、高校卒業資格も同時に取得することができるようになりました。

　学園生は、卒業と同時にトヨタ自動車の正社員として、本社工場をはじめ各工場へ配属されます。配属後、トヨタの生産活動の中核を担うリーダーとして活躍できるように、本学園では知識・技能・心身のバランスのとれた総合教育を実践しています。なかでも様々な実習を行う技能教育においては、配属後の職場を見据え、モノづくりのプロであるトヨタの社員が直接指導に当たっています。

２．トヨタならではの教育内容

　本学園は、中卒者を対象とした３ヵ年教育を行う「高等部」と、高卒者を対象とした１ヵ年教育を行う「専門部」から成り立っています。実習主体のカリキュラムのもとで実践的な技能を習得させることに主眼を置く専門部に対し、高等部は３年間かけて社会人としての基礎・基本だけでなく、トヨタのモノづくりの基本的な考え方を習得させることにも注力しています。

　トヨタのモノづくりには、「改善（カイゼン）」や「創意くふう」など、全てのモノづくりの基礎となる考え方が、先人から脈々と受け継がれています。例えば「改善」という考え方は、いまや世界中のモノづくりの現場で活用されています。「改善」とは、端的に説明すると「同じ方法の繰り返しをよしとするのではなく、より良い結果を生むためにはどうしたらよいのかを常に考えて実践することにより、作業効率や個々の能力、さらには職場の組織力を高めていくこと」と言えるでしょう。このような考え方を理解し、現場で実践していくための土台となるのは、基礎的な学力や学ぶ習慣に加え、自ら目標を設定し、それに向かって努力・工夫する姿勢です。高等部ではこの土台作りの一環として、１年次より漢検に取り組んでいます。

授業風景
　前述の通り、漢検はトヨタのモノづくりの基礎となる考え方を体得させる土台作りの一環として導入しました。卒業までに準２級取得を目標に掲げ、全員が受検するよう呼びかけを行い、年３回実施しています。呼びかけに際しては、クラス担任だけでなく、国語の指導員も積極的に案内しています。

　検定に向けた学習は、自学自習が基本です。高等部の学園生は全員が寮生活を送っているため、寮の自習時間を使って学習しているようです。なお、国語科の授業では毎週漢字テストを行い、漢字を書いて覚えることを徹底させています。検定結果を伝える際、２級以上の上位級合格者は全学園生の前で表彰しています。表彰することによって、他の学園生の励みになっているようです。

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