ご入居者様・ケアスタッフ・ご家族様を繋ぐ漢検

【導入目的】心身ともにご入居者様にお元気に過ごしていただきたい

　ご入居者様の中には『試験』そのものに取組んだことが無い方がいらっしゃいました。新しい何かに挑戦していただきたい、目標をもって日々の生活を送っていただきたいという思いから、日々のアクティビティとして漢検を導入することにしました。また、ホーム長や副ホーム長も、運動や食事、専門的なケアに加え脳機能を活性化する活動を取り入れたいという思いを持っていました。認知症の症状をお持ちのご入居者様に対し、少しでも進行を遅らせたいというのがスタッフ一同の思いです。アクティビティに参加されるご入居者様の中には、心身に良い変化が見られる方がいらっしゃいます。ご入居者様に良い変化があると思える活動は積極的に取り入れていきたいと考えています。

【アクティビティの運営方法】定期的に漢検アクティビティを行います

　検定に向けて約2ヶ月間の学習期間を設けています。週1回のペースで8回ほど漢検アクティビティを開催しています。前半の4回では問題集を使い、後の3回は実践形式で模擬試験会を行います。漢検は検定時間が最長でも60分ですので、1枠のアクティビティにはちょうど良い時間です。そして最後の1回では試験時の注意もご入居者様にしっかりとお伝えします。トメハネやクセ字に気を付けること、指示通り読み問題はひらがなで答えること、問いの意味と解答の仕方等々、最終確認を行います。また、受検級の決定の方法ですが、最初に10級、9級、7級という順番にプリントに取組んでいただきました。ご入居者様にとっては7級くらいから難しく感じるようで、7級が難しかった方にはなるべく10級から受検するようにオススメしました。7級以降は順々に上の級のプリントに取組んでいただき、十分合格ができる級から受けていただくように、受検級を決定していきます。アクティビティ以外にも、お部屋に宿題を持ち帰っていただく、ホーム内に過去問題を貼り出す、共有スペースに漢検ジャーナルを置くなど、日頃から漢字に触れることができる環境を整えました。

【準会場実施規定人数10名を集める工夫】漢検をご入居者様とのコミュニケーションツールと捉え、個別にお呼びかけをします

　準会場として漢検を実施するためには、受検者を10名以上募る必要があります。ご高齢の方々の心の変化は季節に影響を受けます。暖かい時期は気持ちが前向きになり、様々なことに取組む意欲がありますが、寒い時期は塞ぎがちになってしまいます。特に冬の時期に漢検を実施する場合は早い段階から受検へのお声かけをするなど工夫が必要です。プリントを解いていただき、「すごいですね！」「一緒に頑張りましょうよ！」「楽しいですね！」と積極的にお声かけをしています。皆様に前向きな気持ちになっていただくことが何より大切です。どうしても10名が集まらない場合は、スタッフが受検をしています。スタッフとご入居者様が同じ目標をもつことで、自然と会話が増え、今まで以上に距離が縮まりました。

【漢検を導入した効果】心身ともに良い変化があり、皆の絆も深まりました

　当ホームでは、学習記録表をつけています。最初のアクティビティでは120点しか取れなかった方も、回を重ねるにつれ、160点、180点と確実に点数が上がっていきました。学習記録表はお名前と受検級、点数を書きとめておくだけで簡単に作れます。「○○さん、○点も点数が上がるなんて本当にすごいですね！」と具体的にお声かけをするためのツールとして重宝しています。点数が上がるということは、もちろん問題に慣れたということもありますが、漢字を記憶する量が増えたと捉えることもできると思います。また、ご入居者様同士の交流も増えました。例えば、同じ階にお住まいの方同士で辞書の貸し借りをしたり、食事時に漢検の話題で盛り上がったり、受検をしない方も話を聞く中でやっぱり自分も挑戦してみたいという気持ちになったりと、アクティビティ担当者としては本当に嬉しい限りです。不穏になりやすかった方が落ち着き、心の安定にも繋がっている様子です。ご家族様がご入居者様のために漢検の問題集を購入し、渡されている場面も見受けられました。漢検を通してホーム全体が明るくなり、ご入居者様の心身ともに良い変化をもたらしていると感じています。これからも年2回くらいのペースで継続的に漢検を実施していきたいと思っています。

※掲載内容（所属団体、役職名等）は取材時のものです。