PROFILE小賀 昌法（こが まさのり）
1992年、釧路工業高等専門学校を卒業後、プログラマとしてNECネッツエスアイに入社。その後、ヤフー、トランスコスモス、自身での起業などを経て、2010年にECナビ（現VOYAGE GROUP）入社。CTOとしてエンジニアの採用・育成・評価戦略におけるさまざまな仕掛けを構築・運用し、事業開発会社としてのエンジニア文化の醸成に大きく貢献する。また、サービスインフラや社内インフラの構築・運用を手がけるシステム本部長や情報セキュリティ委員長も兼任。2018年にVOYAGE GROUPの取締役CTOに就任、VOYAGE GROUPとサイバー・コミュニケーションズが2019年1月に経営統合したCARTA HOLDINGSの執行役員CTOも務める。
エンジニア文化を醸成していくために
CTO（最高技術責任者）というとテクノロジーの担当と思われがちですが、技術部門の責任者として経営に携わっています。中期経営計画の達成のために、技術以外のところもやれるところは何でもやっていくスタイルですね。当社はソフトウェアをベースとしたプロダクトやサービスの事業が多いのですが、特にコロナ禍においてIT基盤の整備がますます重要視されています。お客様に向けたサービスとしてだけでなく、当社についてもです。
私が特に力を入れているのは、エンジニアたちが自由にのびのびと良いものを作っていける環境や文化作り。IT業界は動きが速いので、一人ひとりの作業を会社が決めるのではなく、現場に権限委譲しながら進めることのできる風土はとても大切です。その風土を作り、会社としての大きな方向性を指し示すのが私の役割。組織の規模が大きくなれば直接伝える機会は少なくなるため、何らかのドキュメントを通じて考えを伝えることが非常に重要です。当社全体でエンジニアは150人程ですが、文化を醸成するために、ここだけは守りたいという大切なことをしっかり伝えること。そして常にそれを更新することを心掛けています。
コンパクトな文章、伝え方を工夫
文章は読んだうえで理解してもらうことが大事なので、言いたいことをいかに端的に伝えるか、どう伝えたら従業員の心に届くかは常に考えています。同じ趣旨のメッセージも、言葉の使い方、伝え方の工夫ひとつで相手の受け止め方が大きく変わるからです。
例えば、コーポレートサイトに載せている「インターネット領域の事業開発会社における差別化要因は人である」というメッセージ。これは、移り変わりの速いこの業界で、仕事のノウハウはプロダクトに残るのではなく、関わって来た人に残るという考え方です。仕事で得た体験を一人ひとりがナレッジ（知識、知恵）に変え、それをチームでシェアし、活用していく。会社として大事にしている考えをできるだけ短い文章で示しています。
別の例を挙げると、「小さく挑戦し続け、早く失敗する」というメッセージがあります。早い段階で失敗して、その失敗から学んで良いものを作っていこうという考え方ですが、これも単に「試行錯誤のスピードを速くしよう」という言葉だと「あたりまえだな」と思うだけ。「早く失敗するんだ！」と言われると、VOYAGE GROUPが大切にする精神が伝わるでしょう？
考えを言語化してチームで共有する大切さ
プログラマーやソフトエンジニアは専門職ですが、当社ではいかに“チームで”よいものを作っていくか、“チームでのもの作り”を大切にしています。
エンジニアに限らず専門家はとかく自分のやり方が一番いいと思いがちですが、私たちは「では、なぜそのやり方がいいと思ったのか？」を必ず言葉にしてチームに伝えてもらいます。みんなでものを作っていくためには、他のメンバーみんなが理解し、ナルホドと納得したうえでチームの意思決定を下す必要があるからです。
さらに、そういった説明をする際に気をつけたいのが、「事実」と「意見」をしっかり分けること。事実と意見をまぜこぜにして自分のやりたいことを語れば、周りは正しい理解や判断ができなくなってしまいます。背景となる「事実」があって、そこからこんな「課題」が浮かび上がり、その課題を解決するために自分はこの「アイデア」を導き出した…。そんなふうに口頭でも文章でも、自分の考えを言語化することが、チームでのもの作りには大切です。
