第12回 今、あなたに贈りたい漢字コンテスト

第12回 今、あなたに贈りたい漢字コンテスト高校生部門 受賞作品

文部科学大臣賞
高校生部門 文部科学大臣賞 受賞作品

「字」

お母さん へ

私 より

お母さんの書く字が好き。だから新学期になる度に教科書に名前を書いてほしいとお願いする。「字を書くのが上手だから自分で書きなさい」って言うけどそうじゃないんだよ、教科書を使う度にお母さんが書いた名前を見て嬉しくなる。だからまた書いてほしいな。

猿渡 すず さん

熊本県・16歳・玉名女子高等学校

受賞者コメント

この度は、このようなすばらしい賞に選んでいただきありがとうございます。私の作品が選ばれるとは思っていなかったため、先生から聞いたときは、驚きと同時に嬉しさが込み上げてきました。
小学生の時から、私に向けて書かれた伝言の紙を集めて大切に保管するほど母の字が大好きです。それは今でも変わっておらず、特に名前を書かなければいけないときは、母に「名前を書いてほしい」とお願いします。高校生になった今、素直な気持ちを伝えるのはとても恥ずかしいですが、この作品を通して伝えることができたのでよかったです。

審査員からのコメント

「字」は、漢字がうまれた古代中国では、うかんむりが意味する屋根と、乳児の形が組み合わさった形とされ、子が生まれる出生の儀礼を行う場所を表していたとされています。さらに、そこでは生まれた子に呼び名をつける――それを「字」といったそうです。そこからやしなうという意味も含まれるようになりました。

すずさんが教科書を使う度、お母さんが書かれた名前の字を見て嬉しくなる素直で温かな気持ちが伝わり、審査員一同のそれぞれにとって忘れがたい誰かの字を思い出させてくれる作品でした。
手書きの字を見ることが減っている昨今、その人にしか書けない字の佇まいが、それを目にする人に様々な思いを抱かせると、すずさんのエピソードは改めて伝えてくれました。お母さまの書かれたすずさんのお名前とそこに込められた思い、そしてそれを受けとめるすずさんのこれからの学生生活がますます豊かな時間となることを願い、文部科学大臣賞を贈ります。

華雪

日本漢字能力検定協会賞
高校生部門 日本漢字能力検定協会賞 受賞作品

「今」

母 へ

娘 より

お母さんはよく、今が一番楽しい時期だよ、と私が成長するたびに言っていて、結局一番っていつなんだろうと思っていたけど、幼稚園、小学校、中学校と進学していくたびに“あの時は楽しかった”と思う、結局、今の時間を大切にねっていう意味なんだと思ったよ

小布施 光 さん

千葉県・16歳・植草学園大学附属高等学校

受賞者コメント

この度は、日本漢字能力検定協会賞に選んで頂き、ありがとうございます。選ばれた事を知った時は正直、ピンとこず、学校で先生方にお知らせしたところ、とっても光栄な賞に選んでいただけたんだと、驚いたのと同時にとても嬉しかったです。日頃から母には悲しいことや嬉しいことの日常を話していて、話をする度に母はアドバイスや考え方、解決方法など色んな言葉をかけてくれます。そしてそれが私の成長に大きく繋がっていると思います。"あの頃に戻りたい"そんなこと誰しも思うことだし、きっとこの先も思うと思います。でも、"あの時を大事にしておけばよかった"そんな思いをしないために、私が今を生きることを大切にしようと思ったきっかけを、作品にそのまま込めました。この度は貴重な経験をさせていただき、本当にありがとうございました。

審査員からのコメント

協会賞、おめでとうございます。
「今が一番楽しい時期」とよく大人は言いますね。
それは、皆さんがキラキラな目をして、何かに夢中になって、本当に楽しそうに見えるからなのです。特に親は、いつでも、そんな子供の姿を見ていたいと思うものです。しかし良い時ばかりではなく、時には悲しい苦しい時もあるでしょう。それでも、「今」の時間を大切に過ごすことでしか、前に、未来に進むことはできません。
「娘」さん、将来にむかって、何事にも今を大切に頑張ってくださいね。

山崎信夫

審査員賞
高校生部門 審査員賞 受賞作品

「鯖」

父ちゃん へ

美和 より

いつも仕事を頑張ってくれる父ちゃん。仕事帰り、自分のご褒美に大好きな鯖缶を買うのにいつも私や母ちゃんが食べちゃってごめんね。全部食べちゃっても文句一つ言わない父ちゃんに美味しい「鯖」を贈るよ!いつもお仕事お疲れ様!

若杉 美和 さん

東京都・16歳・東京都立田園調布高等学校

受賞者コメント

今回は審査員賞という素晴らしい賞に選んで頂きありがとうございます。率直に嬉しかったですが、驚きもしました。まさか、「鯖」が賞に選ばれるとは思っていませんでした笑。毎日仕事を頑張ってくれているお父さんへ、少し変わった角度から感謝を伝えたいと思い、お父さんの大好きな「鯖」缶と掛けて、今回の作品を作りました。真っ先にこの結果を家族に伝えました。「鯖」というまさかの漢字に笑いが起こったのと同時に、お父さんからこちらこそありがとうと言われました。今回のコンテストを通じて、またひとつ家族との絆が深まりました。ありがとうございました。

審査員からのコメント

仕事を終え、大好きな鯖缶を食べようと買ったものの、娘と妻がそれを食べてしまう。にもかかわらず、文句一つおっしゃらないお父さま。お父さまはじめ、美和さんとご家族の様子が目に浮かぶように伝わってくる内容でした。
また、字を贈る欄に書いてくださった「鯖」の字がなんとものびやかで、お父さまが大好きな鯖缶の美味しさが伝わってきます。
美和さんご家族の日常のアクセントのような鯖缶。「鯖」の字を通じて感じられる美和さんご家族の温かさに審査員賞を贈ります。

華雪

審査員賞
高校生部門 審査員賞 受賞作品

「携」

スマートフォン へ

私 より

初めて会った日から思い出を大切にしてくれて記念日を覚えている所が凄く好き。毎朝起こしてくれるし、何時でも遊んでくれた。無理して熱を出したこともあったね。君がいない毎日を考えられない。一生そばにいてほしい。でも、3年ぐらいで乗り換えるかもね。

櫻井 寧音 さん

兵庫県・18歳・兵庫県立伊丹北高等学校

受賞者コメント

まず、受賞できたことに大変嬉しく思います。過去の素晴らしい作品を見ると家族や友人に贈るものが多く、そんな中でスマートフォンへ向けて書いた私の作品が受賞するとは思いませんでした。しかし、私にとってスマートフォンはとても馴染むものでありいつも楽しい時間を残してくれたり、暇な時間を潰してくれたりとお世話になっています。普段過剰充電したりとスマートフォンに対して労わるという考えを持ち合わせていなかったためこのような機会に感謝しておこうと書かせていただきました。これからはもっと大切に使っていこうと思ういいきっかけになりました。ありがとうございます。

審査員からのコメント

現在、日常生活に欠かせないものの一つとなっているスマートフォン。総務省の調査によると、2011年度には3割程度だった国民のスマートフォン世帯保有率が、2023年度には約9割となっています。生活必需品となりつつあるスマートフォンとの毎日に着目された点を評価し、審査員賞をお贈りします。

「携」の字は、漢字がつくられた古代中国では何かの進退を決める時、鳥を“携えて”、鳥占いを行ったことから、何かを手に持ったり身につけて持ち歩く意味へと展開したそうです。スマートフォンは現代を生きるわたしたちにとっての「鳥」のようなものなのでしょうか。生活に欠かせなくなりつつあるスマートフォンですが、「3年で乗り換える」ものにわたしたちの何かを占わせるような行動が果たしてよいものなのかどうか。そうしたことも含め、改めて考えさせられます。

華雪

審査員賞
高校生部門 審査員賞 受賞作品

「息」

私が描く絵 へ

私 より

幼い頃から、もし私の絵が動き出したらどんなに楽しいかと考えていました。どんな子供っぽい想像でも必ず形にできる絵という素敵な世界とそこにいる皆が大好きです。今の私にできることは線や色を贈るくらいだけど、いつか皆が息をするところが見てみたいな。

伊藤 凜々 さん

山形県・15歳・山形明正高等学校

受賞者コメント

この度は高校生部門の審査員賞に私の作品を選んでくださり、誠にありがとうございます。
作品を書く際に贈る漢字を何にするべきか本当に迷いましたが、「生」や「命」ではなく「生きている証」を贈りたいという思いから「息」という漢字を選びました。
改めて作品を読み返してみると少し内容が稚拙だったかなと恥ずかしい気持ちもありましたが、自分の絵に対する思いをありのまま表現できたので今ではなんだか誇らしいです。
これからもずっと自分の絵を好きでいられるように、今回の作品を書いた時のような子供心をいつまでも忘れないでいたいです。

審査員からのコメント

「息」の字のなりたちは、漢字がうまれた古代中国において、鼻をあらわす「自」で呼吸することが心臓=「心」を動かす生命のあかしであったとされています。
凜々さんの丁寧な字で書かれたエピソードからは、絵を描く際も丁寧に、それを大切にされている様子が伝わってきました。想像の世界には、凜々さんが時に稚拙だと思ったとしても、まさに息をするようにそこに生きている存在がいると感じられるのだと思います。そんな世界を絵に描いてアウトプットする術を持たれている凜々さん。豊かな想像力をこれからも大切に、息づかせていっていただけたらと願い、審査員賞をお贈りします。

華雪

佳作
  • 吉岡 莉乃 さん(広島県・17歳・広島県立東高等学校)
  • 曽我部 瑠奈 さん(福岡県・16歳・福岡県立嘉穂東高等学校)
  • 藏元 一花 さん(宮崎県・16歳・宮崎県立高城高等学校)
  • 藤井 透真 さん(東京都・17歳・東京都立田園調布高等学校)
  • 田上 実奈 さん(東京都・15歳・東京都立赤羽北桜高等学校)
  • 角田 和奏 さん(熊本県・16歳・玉名女子高等学校)
  • 井爪 笙太 さん(京都府・16歳・京都府立北桑田高等学校)
  • 本村 帆大 さん(神奈川県・16歳・湘南学院高等学校)
  • 竹中 文香 さん(東京都・17歳・文化学園大学杉並高等学校)
  • 安孫子 悠香 さん(群馬県・15歳・群馬県立高崎女子高等学校)

※ 受賞者の都道府県、団体名、年齢、職業は応募当時のものです。

※ 基本的には応募作品の原文をそのまま掲載しておりますが、一部修正を加えている箇所がございます。ご了承ください。