学校法人、各種教育機関の指導者様へ
団体受検 取組事例
大学・短期大学・専門学校
「チーム医療」の一員として治療に携わるために
近畿 / 大阪
学校法人栗岡学園 阪奈中央リハビリテーション専門学校
理学療法学科 専任教員 小路 実春 様
■信頼される理学療法士の育成
本校は、生駒山が見える豊かな自然に恵まれた環境にあります。教育理念に「臨床現場で役立ち、人に信頼される理学療法士・作業療法士の育成」を掲げ、知識や技術のみならず広い視野で物事を捉えられる人材を育てています。 私たちは、教職員や世代の異なる学生間の交流を通じた「コミュニケーション能力の育成」、周囲を冷静かつ客観的に見る「配慮のできる人の育成」、積極的な学習を通じて考える力を引き出す「創造的な発想の育成」を教育の特長としています。他にも、馬と関わりながら精神的・肉体的な健康状態を向上させる「馬介在療法(Horse Assisted Therapy)」を中心とした、全国でも珍しい「動物介在療法(Animal Assisted Therapy)」が学べることも特長のひとつです。
■理学療法士に欠かせない「コミュニケーション能力」
理学療法士は、知識や技術はもちろんのこと、患者様のことを第一に考え、機微を感じとることのできる存在でなければなりません。本校の学生には、他人が感じている痛みを理解し、配慮して行動できる姿勢を身につけてほしいと考え、指導をしています。 また、「チーム医療」という言葉があるように、理学療法士は医師・看護師・作業療法士・介護士など様々な関係者と協力し治療にあたります。そこでは、理学療法のプロとして自分の意見を正確に伝え、同時に他者の意見を的確に理解するコミュニケーション能力が求められます。チーム間の相互理解を経て初めて、一丸となって患者様の治療にあたることができるのです。 一方、本学科の一部の学生は自分の意見を相手に伝えることに苦手意識を持っており、患者様への説明など実習等で苦労しているように感じます。また、口頭では意見を発信できる学生も、実習期間中に提出させる、患者様の状態とその対応案を記載するデイリーノートを見ていると、情報量が十分でなかったり動作観察と分析が混在していたりすることが散見されます。そのようなケースでは、教員が学生に、書かれている内容について口頭で確認する必要があります。
■文章検の活用
文章検は当初、実習レポートの質を高めるために導入しました。しかし、現在ではデイリーノートや履歴書等、他者に自分の意見を伝える文章作成の基礎固めとして活用しています。学生には『基礎から学べる!文章力ステップ 文章検 4級対応』を使って、授業の空いた時間を中心に、1回あたり30分~1時間、計6回程度で指導しています。年に1回文章検の受検機会を設け、学生は学んだ内容をもとに、4級、または3級を受検しています。 文章作成の基礎を固めるには、やはり繰り返し取り組ませることが重要です。授業では、文章検の意見文作成の型(※1)に沿って何度も意見文を書かせています。他には、事実を思い出すトレーニングであるブレーン・ストーミングをグループで取り組ませるなど、学生ができるだけ楽しみながら文章作成と向き合えるよう工夫しています。
■文章の効果
正直なところ、指導後すぐに文章力の劇的な向上が見られるわけではありませんが、文章検を通じて意見文の書き方を学んだ経験は、その後の文章作成に効果を発揮しています。例えば、動作観察と分析が混在したデイリーノートを提出してきた学生に、文章検の「事実」と「意見」を書き分ける考え方をアドバイスすると、「あっ」と思い出し、わかりやすく修正したデイリーノートを提出してきます。 このように折に触れて文章検の考え方をもとに文章を書き続けると、最終学年である3年生ではほとんどの学生が一定レベルの文章力を身につけることができています。 本校の学生が、文章検で得た学びを武器に、卒業後も「チーム医療」の一員として医療現場で活躍してくれることを期待しています。
■高校生の皆さんへ
理学療法学科では、在校中に膨大な量の医療知識を覚えることになります。理学療法士を志すにあたり、まずは諦めないで努力する姿勢が大切です。 また、他者を尊重する姿勢も大切です。たとえコミュケーションが得意であったとしても、他者を尊重する姿勢がなければ患者様と信頼関係を築くことはできません。 この2つの姿勢を意識していれば、知識やスキルは自然と身につき、きっと患者様に信頼される理学療法士になれるはずです。
※1 文章検4級は「事実」と「意見」の2段落、文章検3級では「事実」「意見」「根拠」の3段落で構成された意見文作成問題を出題している。
※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。