学校法人、各種教育機関の指導者様へ
団体受検 取組事例
中学校
担任と国語科が連携し、学校全体で文章力を育成
関東 / 東京
[私立] 文化学園大学杉並中学・高等学校
国語科 主任 太田 武利 様
理科 教諭 染谷 昌亮 様
輩出したい人物像と必要な能力
本校は、国際社会で活躍できる人材を輩出すべく、自ら考え物事に関わることのできる、社会から必要とされる人間の育成に取り組んでいます。
中学・高校課程での能力育成では、学問の基礎である言語領域と非言語領域のどちらも重要だと考えています。そこで本校では、言語領域の英語・国語と非言語領域の数学の授業時間数を多く配分しています。英語科では国際言語である英語の力を、国語科では物事を思考するうえで欠かせない母国語の力を、数学科では様々な情報を整理し活用する力を育成していきます。
また社会で活躍するには、能力だけでなく教養も重要だと考えています。本校には、学校行事として考えられるイベントが一通り揃っています。文化祭や体育祭はもちろん、オリエンテーション合宿や校外学習、語学研修旅行や海外への修学旅行、合唱祭に鑑賞教室など、毎月5つ前後のイベントがあります。こういったイベントを通じて、教科学習では得られない様々な体験・経験をし、多くの物事に興味をもつ力、広く物事を受け入れられる感受性を身につけ、教養のある人になってほしいと考えています。
取り組むべき課題
母国語の力を育成する国語科では、特に論理的に考える力、考えたことを表現する力を身につけさせることに注力しています。
文章を書く力は表現する力のひとつです。社会人になると、ある程度まとまった量の文章を書くことが求められるため、社会に出るまでの学生時代に、文章力をしっかりと身につけておかなければなりません。また近年は、大学入試でも書く力の重要性が増しています。例えば、AO・推薦入試で提出を求められる志望理由書の指定文字数は、年々増えてきています。本校は、多くの生徒がAO・推薦入試で大学へ進学するため、文章力の育成は特に重要です。志望理由書をもとに面接を受けるわけですから、指定された文字数の文章を書くことはもちろん、いい加減な言葉遣いや情報量に乏しい文章ではいけません。自分のことを知らない相手に対しても、自分をしっかりとPRできるだけの文章を書く力が必要です。
「文章検」を活用する目的
文章力の育成にあたって重要だと考えたのは生徒の学習モチベーションです。生徒のモチベーションとなる目的や目標を何かしら示したいと考えました。
「文章検」は合格すれば資格が取得できるので、生徒の良い目標になります。本校では、クリティカルシンキングを活用したり、ディベートやプレゼン発表、グループワークなどを行ったりと、論理的思考力や表現力を育成させる様々な方法を取り入れています。ただ、これらは学習した成果が見えづらく、生徒によっては取り組んだだけで終わってしまうのが難点です。一方で「文章検」は、検定結果通知で文章力を数値化してフィードバックすることができ、合格者には合格証書を渡すことができる点に魅力を感じました。
「文章検」の学習指導
本校では、高校1年生が「文章検」の4級を学習しています。基本的には授業ではなく、学級担任の指導のもと自学自習で進めています。教材には『基礎から学べる!文章力ステップ』を採用し、範囲を区切りながら宿題として活用しています。1学期かけて1冊解き終わった後、夏休み課題としてもう一度取り組みます。提出された文章を担任が見て、習熟度に不安を感じる生徒に対しては、個別に声をかけて補習を行っています。
また、生徒の学習モチベーションをあげるための工夫として、生徒には年度当初から、大学入試の問題例や志望理由書の例を見せています。その他にも、社会に出てからはプレゼンの機会も多く人を納得させる力が必要だということを伝えるなど、たびたび論理的思考力や文章力の必要性を説いています。
本校の場合は、国語科以外の教科を担当している教員も文章指導に携わるため、国語科主催で教員向け研修会を行いました。研修会では国語科教員から、AO・推薦入試の対策としての文章指導概要をレクチャーしました。指導開始後も、国語科教員から他教員へ重点的にチェックするポイントを伝えたり、他教員が指導で迷った点を国語科教員に相談したり、全教員が一枚岩となって取り組んでいます。
「文章検」の効果
大学合格までの通過点として、「文章検」合格を掲げることで、文章力向上の意識づけをすることができました。
「文章検」を活用して改めて気づいたことですが、社会に出てからや入試の場面では、自分のことをよく知らない相手に自分の文章を見てもらいます。しかし学校内では、自分のことを知らない人に対して文章を書く機会はほとんどありません。「文章検」を受検することは、生徒にとって自分の文章を外部評価してもらえる数少ない貴重な機会にもなっています。
また、知らない相手に文章を書く状況がほとんどないのは、生徒だけではなく教員も同じです。生徒のことをよく知っている教員は、生徒自身が気づいていないことに気づき、文章の内容を充実させることが得意です。一方で、生徒のことをまったく知らない相手にその文章がどう伝わるか、という書き方の部分を見るのは、教員自身もあまり慣れていません。文章指導をする教員には、生徒の個性を見る目と、生徒の文章を様々な視点から客観的に見る目の、二つの目が必要なのです。本校では、指導にあたった担任も生徒と一緒に「文章検」を受検しており、読み手を意識して書くことに取り組んでいます。
今後はさらなる高みを目指し、次年度は高校2年生でも3級の学習、その翌年度はさらに高校3年生でも準2級の学習をしていきたいと考えています。
※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。