学校法人、各種教育機関の指導者様へ
団体受検 取組事例
高校
社会におけるあらゆるコミュニケーションに必要な力を育成する
近畿 / 大阪
[私立] 賢明学院中学高等学校
国語科 主任 上松 貢 先生
国語科 教諭 山田 佳奈 先生
輩出したい人物像と必要な能力
本校は、カトリック精神に基づき「祈る・学ぶ・奉仕する」を校訓としています。グローバル社会に羽ばたく人材を育成するために、国際理解力や社会人基礎力、人間力や未来実現力の育成に力を入れています。
国語科では、多くの言葉や知識をインプットし、状況に応じて適切に使い分け表現することのできる「引き出しの多い子・引き出しを開けられる子」を育てることを目指しています。多様な人々との協働が求められる現代社会では、相手の言うことを正しく受け取り理解する力、自分の意見を相手にあわせて表現し伝える力が必要です。人間は言葉で物事を理解する生き物です。自分の知っている言葉が多ければ、理解できることや伝えられることの幅が広がります。学校教育過程において、社会的に流通性の高い語彙の獲得量を増やし、状況に応じた表現の仕方を身につけることの重要性は高まっていると思います。
取り組むべき課題
これまでも本校では、社会で求められる語彙力・表現力の育成に力を入れてきましたが、2020年度の大学入試改革を目前にして、表現力向上の取り組みをさらに強化したいと考えています。
本校の生徒は、朗らかで心の優しい真面目な生徒が多く、生徒同士も大変仲が良いのが特徴です。一方、自分を表現することには恥じらいがあるのか、あまり自分の意見を主張しません。そんな生徒の表現力を高めていくためには、教員側の環境づくりが肝心です。本校の生徒は、取り組む環境が用意されゴールイメージを持ちさえすれば、抵抗なく行動できます。表現力育成に取り組む環境づくりと、生徒にとって学習の目標となるものを提示することが、本校の大きな課題です。
「文章検」を活用する目的
「文章検」は、文章を読み書きするためだけの検定ではないように思います。「文章検」で求められる能力には、文章を読み取る力、データを理解する力、自分の意見を構築する力、読み手視点で語彙や表現を選び取る力など、実に様々な力が含まれています。それらは、文章を読み書きするに留まらず、思考し結論を出し表現するという、社会におけるあらゆるコミュニケーションに必要な力です。
本校では、2015年度から一部の生徒を対象に「文章検」を活用してきましたが、2020年度の大学入試改革の対応にも活用できると考え、2017年度より高校1年生全員に取り組みを拡げています。生徒が「文章検」の受検や合格をモチベーションとして、文章を書くことに抵抗を感じなくなることと、自分の意見を文章にしていく過程で必要となる思考力や表現力を高めることを目的に実施しています。
「文章検」の学習指導
取り組みを拡大した2017年度には、学年全体・教科横断で取り組みました。4月に行ったホームルーム合宿で、「文章検」3級の学習をすることを発表しました。生徒には、大学入試改革をはじめ、大学でのレポートや就職してからの文書作成など、文章を書いて表現していくことがこれまで以上に求められることを伝え、“「文章検」全員合格”をスローガンに掲げました。
学習には『基礎から学べる!文章力ステップ』を採用しました。週1回の「総合」の時間に、1学期は「文章読解」「手紙文」、3学期は「論説文」を担任が指導しました。「語彙・文法」「資料分析」は夏休み課題で自学自習にしました。教科横断で表現力育成に取り組んだことで、学年全体での合格への機運が高まりました。2018年度からはより実力定着を強化していくために、国語科が「現代文」の授業内で1年間かけて学習指導をするように変更しました。
「文章検」の効果
「文章検」の学習をした高校1年生では、自分の意見を論理立てて書ける生徒が増えました。「文章検」の受検と合格が生徒の学習モチベーションになり、「文章検」の学びやすさがスムーズな学習につながったと思います。
学びやすさのポイントの一つ目は、文章を書く手順や型が学べるという点です。文章を書く手順について指導したときには、生徒から「こうすれば文章が書けるのか!」という反応がありました。書く手順や型を知っているということが、文章作成への苦手意識を払拭する第一歩になりました。ポイントの二つ目は、テーマの身近さです。『文章力ステップ』や「文章検」で出題されるテーマは生徒の日常生活に即したものが多く、生徒にとって考えやすかったようです。そして、三つ目のポイントは、教材の仕立てです。『文章力ステップ』では、学習プロセスが細かく段階的に分けられています。例えば、論説文を書く章では、最初から文章を書くのではなく、選択式の問題から始まる仕立てになっています。『文章力ステップ』に従って学習していくだけで、少しずつ実力を養成していくことができました。
今後も、表現力育成のために、「文章検」の取り組みを継続していきたいと考えています。
※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。