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団体受検 取組事例

高校

文章を書く機会を増やすために、国語総合の授業で「文章検」に取り組んでいます。

国語科 神山 みを先生

関東 / 東京

[私立] 大妻中野中学校・高等学校

国語科 神山 みを先生

教育理念と輩出したい人物像

 本校の建学の精神は「学芸を修めて人類のために」です。これは、6年間の学びを通して、広い視野を有した叡智と、他者の心に寄り添う共感力を育み、他者の幸福に寄与できる女性になってくれることを願うものです。それにはまず、生徒一人一人が幸福を実感し、自己肯定感を強くすることが必要だと考えます。自己の幸福追求と他者の幸福追求は切り離せないものでしょう。学校にはたくさんのコミュニティがありますが、それぞれが所属するコミュニティで、求められ、認められることで、自己肯定感を強くし、また、他者のために学ぶことの意義深さを知ることで、「学び」の原動力を培います。十代の少女たちは、無限の可能性を有していますが、その可能性の扉を開くには、知性や人間力といった鍵が必要です。生徒が描いた夢を叶えられる力を養う場となること、それが大妻中野の目指すものです。

求められる日本語力とは

 井上ひさし氏の『日本語教室』(新潮社)にある「母語は道具ではない、精神そのものである」という言葉が、常に私の言語観の基底にあります。外界を把握し、内なる思いを表出し、また他者との繋がりをもたらす「言語」は、「人間を人間たらしめるもの」と言えますが、中でも「母語」は、人間の基盤を作るものだと考えます。特に創造的思考は、母語によってしか為されないと言われており、母語を豊かにすることはそのまま思考力を豊かにすることにつながります。教育界がグローバル教育時代を迎え、多種多様な言語や文化に触れる機会に恵まれるようになり、本校でもSGHアソシエイト指定校として、各方面でグローバル教育に取り組んでいます。そのような状況下にあって、国語科としては、他国の言語に親しむと同時に、「母語」の重要性を再認識し、「母語」を豊かにすることで、次のような能力・姿勢を育むことが肝要だと考えます。
・自分の思いを言語化し、相手に伝える能力を有すること
・評論文を読んだり、友人と意見を交わしたりして、他者の意見に触れることで、視野を広げること
・物語を読んで、自分以外の誰かの世界を追体験し、他者の心情を理解する力を養うこと

文章力向上の取り組み

 今は、特に自分の考えを言語化させること(実際に文章にしてみること)に力を入れています。授業中役立っているのが、生徒が一人一台所有しているタブレットです。タブレットで意見を提出させ*1、生徒の書いた文章を電子黒板に写し出して、意見交換の機会を持ちます。この時、必ずその意見の根拠を述べることと、直筆で書くこと(キーボード入力はしない)をルールとしています。
  他のクラスの生徒の意見を知ることもできるので、幅広く、多くの人の考えに触れることができます。何より、作業に時間がかからないので、授業中に意見を発表する機会を格段に増やすことができました。もちろん、直接相手の顔を見て意見を交わすことも大切ですので、タブレットを通して出た意見を足がかりにして、グループ討論などに広げています。

*1「ロイロノート」というアプリを使います。シートに電子ペンで意見を書き込むことができます。

文章検の位置づけ

 先述したように、授業内で文章を書く機会は増やしつつあるものの、授業の中では教科書の内容を進めることで精一杯で、文章を書く基本的な技法を学んだり、語彙の学習に時間を割いたりすることは難しいのが現状です。そこで、文章検の受検を課すことで、文章を書くことに専念する時間を設けることがねらいでした。「合否」がかかると、生徒も真剣に取り組まざるを得ません。
 具体的には、毎年、高校1年生の国語総合の授業内で取り扱い、全員が3級を受検します。授業時間に組み込むことで、学習時間を確保できたことが、合格者数を伸ばす要因になったと思います。また、検定対策として最も意識したことは、問題演習の徹底です。テキストには協会発行の『文章力ステップ』を使用しました。実践問題が多く、試験対策には最適でした。
 問題演習では、配点が高い作文の演習に最も時間を割きました。まず、書き方の基本メソッドを丁寧に説明し、後は量を書かせることを最優先にしました。書いた文章は、タブレットで撮影させたものを、先述の「ロイロノート」というアプリを使って提出させました。「ロイロノート」では、生徒の撮影した原稿に電子ペンで添削を加えることも可能です。テキストを集めるとなると、どうしても手間と時間がかかってしまいますが、タブレットを使うことでスムーズに提出と添削を行うことができ、これによって数多くの問題を生徒に解かせることが可能となりました。

文章検実施の効果

 嬉しいことに、9割近くの生徒が合格してくれました。一番の効果は、生徒に自信をつけさせることができたことにあると思います。皆、非常に合格を喜び、この成功体験をもとに、今まで挑戦してこなかったことにもチャレンジする勇気を持ってくれたようです。また、文章を書くことへの抵抗が確実に弱まったと感じています。実際、以前に比べ、整然とした文章を書くことのできる生徒が増えました。語彙への関心も高まり、文章を書くときに辞書を積極的に開く姿が見受けられるようにもなりました。

小学生の皆さんへメッセージ

 小学生の皆さんへの一番の願いは、出来るだけたくさんの本を読んでもらいたいということです。また、話すときに、単語のみを並べるのではなく、文の形で表現する習慣を身につけてください。「日本語」は皆さんにとって、思考力を養い、感性を磨く、最も基本的なものです。言葉の花園の楽しさを味わってください。

※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。


学校紹介

大妻中野中学校・高等学校(東京都) <創立>1941年

校舎外観 中高一貫の女子校。6年間を通して、将来、自分が進むべき道を見極め、その目標に到達できる十分な学力養成を可能にするように徹底した学習指導、進路指導を実施。大学受験に対応した発展的な課外講座を学校で実施しており、特に塾や予備校に頼らずに、難関大学に多くの生徒が合格している。


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