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論理的に思考・判断・表現する力の定着の計測に、「文章検」を活用しています。

国語科 岡 かなえ先生

北信越 / 石川

[国立] 金沢大学人間社会学域学校教育学類附属高等学校

国語科 岡 かなえ先生

学校の特色

 本校は、文部科学省平成26年度SGH事業で研究開発校に指定され、「北陸からイノベーションで世界を変えるグローバル・リーダーの育成」という構想で研究開発を始めて4年目になります。総合的な学習の時間の授業では、「地域課題研究」「異文化研究」「グローバル提案(模擬国連)」「グローバルキャリアパス」という4つの課題研究を一貫したカリキュラムとして位置付けており、その方法は確立されてきています。そして、総合的な学習の時間の授業を中心に据えながら、全ての教育活動を通して、グローバル・リーダーとして備えるべき人間力の育成を目的とした指導を行っています。また、グローバル・リーダーとして養いたい人間力に、本校では以下の5つを掲げています。

①基礎的教養
②課題対応能力(発見・提案・行動・発想力・思考力)
③英語運用能力(コミュニケーション能力・プレゼンテーション能力)
④グローバル・マインド(アイデンティティの確立と多文化共生)
⑤リーダーシップ(責任感・使命感・公共性・柔軟性)

国語科の取り組み

 国語科では本校が養いたい5つの力を、①基礎的教養=語彙力・知識、②課題対応能力=思考力・判断力、③英語運用能力=表現力、④グローバル・マインド=異文化を認めあう姿勢、⑤リーダーシップ=協働性と定義しています。

①「語彙力・知識」を養うことに重点を置いた授業例
 「知識や語彙を増やす」ということを意識し、同じテーマの作品を複数扱うという授業スタイルをとっています。1つの事象を多角的に学ぶことで、より深い知識の獲得や教養の習得が可能になるよう工夫しています。

②「思考力・判断力」を養うことに重点を置いた授業例
 「論理的に読み取る力を育てる」ということを意識し、思考の過程と到達目標を可視化することで、思考力・判断力を育てるという授業を行っています。具体的には「到達目標(評価指標)を提示し、思考ツールを用いて考える」という学習活動を設定しています。生徒の思考を生徒自身に見えるようにすることで、答えを導く上でのつまずきや、物事を発言する時の根拠の弱さなどに、生徒自身が気付くようになっています。

③「表現力」を養うことに重点を置いた授業例
 「場面に応じて適切に書く力を育てる」ということを意識し、インタビュー記事の作成を行っています。具体的には、生徒はペアになり、それぞれが取材をする側・される側の立場になります。相手にどのような内容でインタビューするのかを考えるのと同時に、必要な情報を手に入れるための質問の仕方や、話の聞き方などを工夫しながら進めなければなりません。これを繰り返し行うことで、つながりや論理展開を意識した表現力が身につけられると考えています。

④「異文化を認めあう姿勢」を養うことに重点を置いた授業例
 地方と都会、日本と外国、昔と今、自己と他者などの比較を通して、「違いを認めあう姿勢」を育てることを意識しています。物事を多面的に捉える視点を育てた上で、それぞれの違いについて、自身の具体例などもあげて考えさせています。

⑤「協働性」を養うことに重点を置いた授業例
 「班活動を通して、目標に向かって意見をすり合わせていく力を育てる」ことを意識して、「生徒自らが問いを立て、根拠を明確にして論理的に答えを導く」という探究学習を行っています。

≪国語科の5つの人間力の育成を示す表≫

 今回は5つの人間力の育成についてそれぞれ分けて記しましたが、厳密に分けられるものではなく、それぞれがつながりを持ち相乗的に伸びていくものです。また、本校では、総合的な学習の時間の内容を中心に据えて授業をデザインしており、教材についても、つながりのあるものを意識して選んでいます。今後、国語という領域を超えて発揮される力となりえる、教科の知識や技能をベースとした質の高い学力を育てていくことが大事であると思います。

「文章検」への取り組み

 本校では、論理的に思考・判断・表現する力の定着を計測するツールとして、「文章検」を活用しています。具体的には、国語総合の中の現代文の指導内容につなげ、高1の2学期に全生徒が準2級の取得を目標として受検しています。前述したように高1の1学期の授業では、到達目標を提示し、思考ツールを用いて考えるという学習活動を設定しています。様々な思考の型を教え、論理的に読解する技能を身につけさせるとともに、それを活用させる指導を行っています。最初は何の思考ツールを用いるかを教員が指定していますが、徐々に「この問いに対しては何を用いるのがふさわしいか」を生徒が選び、考えて用いられるように指導をシフトさせています。このような学習活動によって身についた能力を計測する機会として、検定に挑戦させています。検定受検を通じて、生徒は自己の能力を把握する機会となり、教師も同様に集団及び個別の能力を把握する機会となっています。
 そして、この結果を基に生徒は学習、教師は指導における新たな課題設定を行い、課題解決に向けたアプローチ方法を考えるきっかけとなっています。

小・中学校教員へのメッセージ

 社会ではコミュニケーション能力が求められています。社会人になると、共通認識がほとんどない相手の話を理解して受けとめる力や、自分の意見や考えを的確に伝える力が求められます。それらの力の定着を計測する1つのツールとして、「文章検」を活用することができると考えています。
 「文章検」の学習を通して、相手の考えを受けとめた上で自分の意見を論理的に伝える力を身につけることができます。しかし、コミュニケーション能力はそれだけで十分でしょうか?子どもの発達段階に応じて異なると思いますが、学校で導入する場合には、「文章検」の学習の後に、「異なる意見の人と対話する力(交渉する力)」、「課題に向けて協働する力」などの指導を行っていくことが大切だと思います。

※掲載内容(所属団体、役職名等)は取材時のものです。


学校紹介

金沢大学人間社会学域学校教育学類附属高等学校 <創立>1947年

 全国で三番目に設立された高等師範学校の金沢高等師範の附属を母体とする、北信越地方で唯一の国立高等学校。校風は「自主自立」、独立自治の精神を育む教育姿勢は、建学以来揺るがない。平成26年から5年間、文部科学省よりSGH*に指定されている。

*グローバル・リーダー育成に資する教育課程等に関する研究開発を行う高等学校を、文部科学省がSGH(スーパーグローバルハイスクール)として指定する制度


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